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北朝鮮が中国への「大麻」輸出に乗り出す

2016年12月9日(金)12時22分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

OpenRangeStock-iStock.

<米欧では合法化が進み、アジア各国では依然として禁止となっている大麻だが、大麻に関する法規定がないのが北朝鮮。法の盲点をつき、大麻の輸出ビジネスに乗り出す人が出てきた> (写真:大麻草)

 ヨーロッパやアメリカ大陸では合法化、非犯罪化の流れが進んでいる大麻。一方、アジアのほとんどの国では、依然として厳しく罰せられる犯罪だ。

 そんな中、世界的にも珍しい、大麻に関する法規定のない国がある。北朝鮮だ。

子どもたちに蔓延

 大麻の使用は、朝鮮半島が日本の植民地支配下にあった1935年に制定された「朝鮮麻薬取締令」で禁止された。しかし、1948年の北朝鮮建国後には、新たな法律が制定されなったようだ。北朝鮮は、2007年に麻薬単一条約など、関連する3つの国際条約を批准したが、国内法の整備はなされていない。

 そのような法の盲点に目をつけた人々が、大麻ビジネスに乗り出したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

 北朝鮮製の薬物と言えば、覚せい剤が知られている。かつて、日本へ大量に密輸されていたのは周知のとおりだ。現在は国内の汚染も深刻で、子どもたちにまでまん延している。

(参考記事:一家全員、女子中学校までが...北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」

韓国農村でも「当たり前」

 しかし、少なくとも密輸においては、今後は大麻に取って代わられる日が来るかもしれない。

 咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、羅先(ラソン)経済特区では、大麻の取引が活発に行われている。市場の商人は、農民から大麻1キロを30元(約500円)で買い取る。それを中国人に500元(約8300円)で売り、大儲けしている。

 情報筋によると、北朝鮮で大麻は、大豆などと同じ油糧作物(油の原料となる作物)として扱われている。

 元々はどこにでも生えている雑草だったが、金日成氏が食用油の不足問題を解決するために、大麻の栽培を大々的に奨励。それを受け、1980年代の初め頃から各地に畑が作られた。今では油を取る目的で栽培する人は少なくなったが、かつての畑周辺には、野生化した大麻が生えているという。

 咸鏡北道の別の情報筋によると、北朝鮮の人々は今まで大麻のことを「うさぎのエサにしかならない雑草」ぐらいに考えていた。それは税関職員も同じで、中国人の荷物から大量の大麻が発見されても、「ああ、山菜の買い付けか」程度にしか考えず、何の制限も加えていないという。

 ところが、大麻が高値で売れるという話が伝わるや、状況は一変した。羅先に近い、慶源(キョンウォン)郡や富寧(プリョン)郡の農民は、先を争って大麻を刈るようになり、熾烈な争奪戦が起きている。大麻が国外で違法薬物であることを知っている人は、あまりいないとのことだ。

 ちなみに輸出先の中国は、歴史的な経緯もあり薬物に対しては非常に厳しい。密売目的で1000グラム以上のアヘン、50グラム以上のヘロイン、覚せい剤を所持していた者は、最高で死刑に処される。

 一方、大麻は法的に麻薬と同じ扱いをされるが、取り締まりはかなり緩いと言われている。それは刑法の施行規則にも現れており、死刑の対象となるのは、大麻樹脂なら10キロ以上、大麻草なら150キロ以上の密売目的の所持だ。

 一方の韓国では、先述の朝鮮麻薬取締令、米軍政当局の政令、そして大韓民国成立後の1957に制定された麻薬法で、大麻の使用、所持などは禁止されている。この法律は属人主義が適用され、海外で使用した場合でも処罰が可能であるなど、非常に厳しい扱いとなっている。

 しかし1960年代までは農村で当たり前のように吸われており、警察も取り締まることはなかった。あくまでも「タバコの代用品」との認識だったためで、その後の経済発展と共に、自然と姿を消していったという。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ...「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
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