最新記事

イスラム過激派

「ドイツ版CIA」の情報部員はISISのスパイだった

2016年12月1日(木)17時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Ina Fassbender-REUTERS

<イスラム過激派の情報収集にあたるドイツの情報組織で、職員の男がISISのスパイ容疑で逮捕された。ヨーロッパ各国の情報機関にイスラム過激派のスパイが潜入する脅威は、既に現実のものとなっている>(写真:ドイツ・ケルンの憲法擁護庁の庁舎)

 イスラム過激派や極右などの監視にあたるドイツの情報機関「憲法擁護庁(BfV)」で今週、職員の男がイスラム過激派の主張をネット上で宣伝し、情報機関本部の爆弾テロを企てた疑いで逮捕されたと、各国の報道機関が報じている

 ドイツのニュース週刊誌シュピーゲルなどによると、逮捕されたのは51歳の職員で、ケルンにある本部の爆弾テロ計画について、一部を認めている。この容疑者は、今年4月からイスラム過激派に関する情報収集を担当していたが、外部のイスラム教徒との間で、「非信者」への攻撃を開始したり、「アラーの名のもとに」本部を爆破したりする計画を練る内容のチャットが見つかった。

 容疑者は約2年前にイスラム教に改宗し、その後、過激主義に傾倒していったらしく、ISISの指導部の1人、モハメド・マフムードへの忠誠を誓っていると見られている。

【参考記事】モスル陥落で欧州にテロが増える?

 イスラム過激派によるテロの脅威が高まるヨーロッパでは、各国の情報機関が過激派の情報収集を強化するために担当職員を積極的に採用しているが、専門家は、「安全保障上のリスクを抱えた人物を採用してしまうことは、どれだけ細心の注意を払っても避けられない」と言う。

 ドイツ情報機関の広報担当は、容疑者がイスラム教に傾倒していることは組織内の様々なスクリーニングでもわからなかった、と話している。「採用期間中も訓練中も、またどの職務においても、常に目立たないように行動していた」

 中東から逃れたISISの戦闘員が世界各国に分散する危険性が指摘される中で、その監視にあたるはずの情報機関にまでISISのスパイが潜入する脅威は、既に現実のものとなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:日銀利上げ、円安とインフレの悪循環回

ビジネス

JPモルガン、26年通期経費が1050億ドルに増加

ワールド

ゼレンスキー氏、大統領選実施の用意表明 安全確保な

ワールド

EU、凍結ロ資産活用へ大詰め協議 対ウクライナ金融
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中