最新記事

感染症

写真が語る2016年:小頭症の赤ん坊を抱きしめるブラジルの母

2016年12月27日(火)10時29分

12月7日、ブラジルで今年初めに猛威を振るったジカ熱。同ウイルス感染に関連して発症するとされる小頭症の赤ちゃんが数多く生まれた。写真は、生まれた娘が小頭症と診断されたグリーゼ・ケリー・ダ・シルバさん。同国レシフェで1月撮影(2016年 ロイター/Ueslei Marcelino)

 ブラジルで今年初めに猛威を振るったジカ熱。同ウイルス感染に関連して発症するとされる小頭症の赤ちゃんが数多く生まれた。

 2016年を象徴する一連の写真について、ロイター・カメラマンが撮影当時の様子を語る。

撮影したカメラマン:Ueslei Marcelino

 胎児の頭が成長していないことを超音波検査で知ったのは、グリーゼ・ケリー・ダ・シルバさんが妊娠7カ月のときだった。

 料金所で働く27歳のシルバさんは、昨年4月に発疹、微熱、そして腰痛が3日間ほど続いたという。

 3カ月になる娘のマリア・ジョバンナちゃんは小頭症と診断された。

 私はシルバさん一家と共に過ごし、マリアちゃんの世話を見守った。

「自分の娘が障害をもって生まれるなんて想像もしなかった」とシルバさんは話す。

「彼女を初めて見たとき、泣いてしまった。完璧な娘で、神に感謝した。愛する気持ちと幸福感に満たされた」

 家族はシルバさん夫婦を支援し、マリアちゃんに分け隔てなく接している。

 このような取材はデリケートだ。家族は起きていることに敏感であり、思いやりをもって敬意を表することが重要だ。私はいつもカメラは下の方に下げ、最初に話しをすることから始める。皆、話を聴いてもらう必要があるからだ。

 シルバさんは小頭症の子どもをもつ母親のメッセージング・グループを立ち上げた。

 彼女たちはお互いに経験と支援を共有する。シルバさんは今でも、いつか娘が歩き、言葉を話せるようになるという希望を失ってはいないが、いまだに何の治療法も提示できない公的医療機関に対しては、苛立ちを隠さない。「歩くことができないと医者に告げられた時には信じられなかった。いずれすべてがよくなると信じたい」

 それから数カ月、私はシルバさんの家族と連絡を取っていた。一家の生活は楽ではない。シルバさんは娘を世話するため、常勤の仕事を辞めた。臨時の仕事に就く夫の稼ぎは1カ月当たり200ドル(約2万3000円)に満たない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中