最新記事

韓国

親友の愛人らが指図!?  朴槿恵大統領は「操り人形」だったのか

2016年11月1日(火)12時05分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

Kim Hong-Ji-REUTERS

<いま韓国を揺るがしている朴槿恵大統領のスキャンダルだが、緊急逮捕された大統領の「親友」崔順実氏の国政介入は同国の対北朝鮮関係にも及んでいたと見られている> (写真は10月27日、ソウルで朴槿恵〔右〕と崔順実〔左〕に扮した抗議デモの参加者)

 韓国検察は31日夜、朴槿恵大統領の友人で、法に反して機密文書を受け取っていた民間人女性の崔順実(チェ・スンシル)氏を緊急逮捕した。崔氏は国政介入などの疑惑の中心人物で、検察が真相解明に本腰を入れれば、朴氏は弾劾や辞任などの厳しい選択を迫られる可能性が高まる。

 崔氏の国政介入は、対北朝鮮関係にも及んでいたと見られている。

素人集団の秘密会議

 韓国紙ハンギョレは10月26日付けの「開城工団中断のミステリー、崔順実で解けるか」という記事の中で、2016年1月4日の核実験直後の7日、韓国政府が北朝鮮向けの拡声器放送の再開を打ち出した際の動きについて疑問を投げかけた。当日の午前まではそんな話はなかったのに、突如として出てきたというのだ。

 続く同年2月10日の開城工団閉鎖も、7日までは国家安全保障会議で議論すらなかったのに、前触れもなく決まったと疑問を呈している。

 ここに崔氏が影響力を及ぼしたのならば、それはどのような形で行われたのか。

 驚くことに、崔氏と親しい財閥夫人や広告プロデューサー、彼女の愛人とされる元ホストが居並ぶ「素人利権集団」が、大統領にどのように指図するかを秘密裏に話し合っていたとの証言がある。

(参考記事:親友の「愛人ホスト」が居並ぶ利権集団...朴槿恵大統領を操った「秘線会議」とは

大統領は「邪教に騙された」

 事実なら、朴氏は「操り人形」だったということになる。

 朴氏と崔氏の関係は、40年にも及ぶ。もともとは、宗教家だった崔氏の父が朴氏に接近。唯一無二の相談役となり、それを崔氏が引き継いだ形なのだが、その隠微な関係に対する懸念は以前からあった。

 そもそも、崔氏の父は仏教とカトリック、プロテスタントを渡り歩いたインチキ宗教家であり、韓国政界からは「朴槿恵大統領は崔氏親子の邪教に騙され、こんなこと(機密文書流出)をしたとしか思えない」との声も出ている。

(参考記事:朴槿恵大統領を食い物にし続けた「怪しい宗教家」の父と娘

 筆者が最も懸念するのは、北朝鮮問題への影響だ。

 歴史上最大のスキャンダルを前に報道合戦が行われる韓国を前に、北朝鮮が黙っているはずがない。率先して北朝鮮包囲網を全世界に呼びかけていた韓国の体たらくに対し、北朝鮮メディアは嘲弄に近い言葉を連日投げかけている。

 金正恩氏にとっては「渡りに船」だろう。恒例行事となった国連人権決議案の上程が迫り、11月と12月という、国連を通じ北朝鮮の人権問題が世界中でクローズアップされる時期に、少なくとも韓国政府は北朝鮮を叩く余裕が無くなる。また、「インチキ宗教家の南北政策には従わない」と強弁することも可能だからだ。

 少なくとも、朴槿恵大統領任期中に南北関係が何らかの進展を見せる可能性は完全にゼロになったとみてよい。

 朴槿恵政権はセウォル号沈没事故などへの対応を誤り、国論の分断を招いてきた。今回のスキャンダルが、韓国社会に今後、長きにわたる混乱をもたらすのは間違いない。朝鮮半島はいま、南北分断のみならず、なんの求心力もなくバラバラになってしまう危機に直面している。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
dailynklogo150.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

透析・手術用の品目、「安定供給図る体制立ち上げた」

ワールド

トランプ氏、NATOへの関与に否定的発言 集団防衛

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 9
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 10
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 9
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中