最新記事

核兵器

老朽化するアメリカ核戦力、次期政権に降りかかる巨額更新費用

2016年10月3日(月)19時50分

9月26日、国防当局者や専門家のあいだでは、予算の制約上、次期大統領はほぼ確実に、オバマ政権が計画した米国の核戦力の維持・近代化の是非と、実施するならばどの程度のペースで進めるのかという決断を迫られるだろうという観測が広がっている。写真は、非武装の大陸間弾道ミサイル「ミニットマンIII」の発射実験。米カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地で2月撮影。米空軍提供(2016年 ロイター/Kyla Gifford/U.S. Air Force Photo/Handout via Reuters)

 マイノット米空軍基地はカナダ国境に近く、風の強い広大な平原にある。パイロットたちが操縦するのは、20世紀半ばのケーブルやプーリー(滑車)も使われている、祖父たちが操縦していたものと同じ爆撃機である。

 グレートプレーンズ地帯の数千平方マイルの地域には、核弾頭装備の弾道ミサイル150発が収められたサイロ(地下式ミサイル格納施設)が散在している。毎年春になると、空軍の職員たちは、融雪で汚れた鉄とコンクリートで作られたサイロの扉を掃除する業務に追われる。

 米国の核戦力は、25年から62年前のあいだに、競合する超大国・ソ連との軍拡競争にのめり込むなかで構築され、これまで何度となく、改修、修理、再塗装を経験してきた。11月8日の米大統領選を控えた今、こうした核戦力の将来が争点になっている。

 民主党のヒラリー・クリントン候補は、大統領就任後最初の仕事の1つとして、前回は2010年に完了した核戦力の見直しを求めることになると言う。

 一方、共和党のドナルド・トランプ候補は、長年にわたる米政策の転換に着手し、今月、5回目にして過去最大の核実験を行った北朝鮮による攻撃を抑止するため、日本や韓国といった同盟国が独自に核武装することを認めると述べている。

 カーター国防長官は26日、就任後初めてノースダコタ州のマイノット空軍基地を訪問した。カーター長官は、米国の核抑止力は安全保障の根幹であり、国防総省にとって最優先課題であると述べた。

 巡航ミサイルを搭載したB52爆撃機の前に置かれた演台で、カーター長官は「更新を進めていかなければ、これらのシステムは確実に老朽化していき、安全性、信頼性、有効性が低下していくだろう」と語った。

「実際のところ、わが国の核兵器運搬手段は、大半が当初の耐用年数を超え、もう何十年も延長されている。したがって、もはやこれらのプラットホームを交換するか維持するかという選択ではない。交換するか、それとも失うかという話なのだ」とカーター長官は言う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ、東部要衝都市を9割掌握と発表 ロシアは

ビジネス

ウォラーFRB理事「中銀独立性を絶対に守る」、大統

ワールド

米財務省、「サハリン2」の原油販売許可延長 来年6

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中