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国民投票とポピュリスト政党、イタリアの危険過ぎるアンサンブル

2016年7月20日(水)16時00分
アフシン・モラビ(本誌コラムニスト)

 イタリアの銀行は時限爆弾を抱えている。融資の17%が不良債権化しており、これはアメリカの10倍の数字だ。金額にして3600億ユーロに達する。

 大手銀行のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナはECB(欧州中央銀行)から不良債権の大幅削減を求められているが、自力では不可能とみられる。EUは公的資金による銀行の救済に慎重で、株主と債券保有者にも損失の負担を要求している。

 ただし、イタリアでは銀行債の約半分を、機関投資家ではなく個人が購入している。EUが強硬姿勢を崩さず、イタリア政府に公的資金の注入を許さなければ、銀行債を保有する人々の怒りを買い、五つ星運動の支持者が増えるだろう。

【参考記事】ドイツ銀行に黄色信号?迫る不安定化の恐怖

 マッテオ・レンツィ伊首相は10月に、国会と地方行政のスリム化を盛り込んだ憲法改正案の是非を問う国民投票を実施する。改正が実現すれば、レンツィが掲げる経済改革のための政策を遂行しやすくなるだろう。ただし、国民投票で負けたら首相を辞任すると明言。彼もまた、国民投票熱に浮かされている。

 レンツィが辞任すれば、市場に衝撃波が広がるだろう。そして、ヨーロッパ第4位、世界第8位の経済を、グリッロと五つ星運動が切り盛りする可能性が高くなる。

 グリッロは多くの左派ポピュリストと同様に、「人民の代表」だと宣言する自分に酔っている。今頃は地中海に浮かぶヨット(実際に所有している)かフェラーリのシート(これもそう)に身を委ね、首相になった自分を想像していることだろう。

 不吉な想像だが、ポピュリストが勢いづいている時代だ。私たちはこの不安と真剣に向き合わなければならない。

[2016年7月19日号掲載]

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