最新記事

安全保障

日本全土が射程圏内に、高度1000km超えた北朝鮮ミサイルは発射成功だった

2016年6月22日(水)17時58分

6月22日、北朝鮮が同日発射した2発目の中距離弾道ミサイルについて、日本の防衛省や専門家は成功だったとの見方を強めている。写真は北京で2月撮影(2016年 ロイター/Jason Lee)

 北朝鮮が22日に発射した2発目の中距離弾道ミサイルについて、日本の防衛省や専門家は成功だったとの見方を強めている。同ミサイルは日本全土、さらにグアムまで届く能力があるとされ、防衛省は脅威のレベルが一段上がったと受け止めている。

 北朝鮮東岸の元山付近から午前8時3分ごろに発射されたこの日2発目の弾道ミサイルは、防衛省と米軍によると、約400キロを飛んで日本海に落下した。北朝鮮と日本は約1000キロ離れており、飛行距離だけみれば日本への直接的な影響はない。

 ところが、自衛隊のレーダーが捉えた情報を防衛省が分析した結果、ミサイルは1000キロを超える高度に達していた。地球の大気圏は一般的に高度約100キロまでとされる。そのはるか上空の宇宙空間へ打ち上げていたことになる。

 中谷元防衛相は同日午後の会見で「中距離弾道ミサイルとしての一定の機能が示された」とだけ述べ、発射の成否については明言を避けた。

 しかし、防衛省関係者は「あれほど角度をつけずに打ち上げず、普通に発射していれば、われわれが見積もっている距離を飛んだ可能性がある」と話す。

 北朝鮮が発射したのは中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられ、防衛省は飛行距離2500キロ─4000キロと推定している。日本全土、さらに米領グアムまで射程に収まる。

 中谷防衛相は記者団に対し「日本に飛来するミサイルの種類が増える。日本の安全保障上、強く懸念する」と語った。

 北朝鮮は今年に入り、ムスダンを4回発射し、いずれも失敗してきた。22日朝に発射した1発目のミサイルもムスダンとみられ、防衛省によると、北朝鮮東岸付近に分離して落下した。

 今回、高度1000キロ超まで打ち上げた理由は明らかになっていない。北朝鮮が「衛星の打ち上げ」と称して発射する長距離ロケットは、高度500キロ程度。それに比べると、異常に高く飛んでいる。

 天体物理学が専門のハーバード大学のジョナサン・マクドウェル博士は「日本の上空を通過するのを避けたのではないか」と推測する。「通常より高く発射して飛距離を短くした。発射は成功したようにみえる」と、同博士は述べた。

 (久保信博 編集:田巻一彦)

[東京 22日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済、関税による「スタグフレーション的」減速へ=

ワールド

英シェル、BP買収を巡る報道を否定 「市場の憶測に

ワールド

米フォード、大半の従業員に週4日出勤義務付け 9月

ワールド

独首相、トランプ氏に米の役割強化要請 ウクライナ紛
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 5
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 6
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 7
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    細道しか歩かない...10歳ダックスの「こだわり散歩」…
  • 10
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 8
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中