最新記事

教育

中国人学生対象の「不正」請負業者、米大学で暗躍

出願書類の捏造、替え玉受験、代理出席などキャンパスでのあらゆる不正まとめてお任せ!

2016年5月31日(火)19時08分

5月25日、米アイオワ大学は、不正行為疑惑で少なくとも30人の学生を調査していると発表した。調査に近い関係者によれば、不正行為の容疑をかけられている学生のほとんど、恐らくすべてが中国籍だという。写真は不正行為が発覚したアイオワ大学のマスコット。22日撮影(2016年 ロイター/Koh Gui Qing)

 その広告のターゲットは、故郷を遠く離れた異国の地で、英語と不慣れな文化に悪戦苦闘する中国人大学生だ。

 中国語のメールやチャットメッセージを浴びせかけて勧誘するコーチングサービスは、米国の大学に在籍する外国人の学生に対して、学位獲得に必要な支援の提供を呼びかける。論文代筆を請け負い、宿題も代行する。替え玉となって試験を受けてくれる業者さえある。1つのコースにつき約1000ドル(約11万円)で請け負うという。

 米アイオワ大学に在籍する数十人の中国人学生にとって、そうしたサービスには抵抗しがたい魅力があったようだ。

「代理受験と論文代筆。あなたに代わり、オンライン授業も受講」──。同大学の学生が利用していた中国語の支援サービス、UI International Student Servicesのソーシャルアカウントのプロフィールにはそう書かれている。別の業者の宣伝メールの末尾には、こんな心強いメッセージも記されていた。「あなたの友人も皆使っている」

 米中西部で最大規模の州立大学の1つであるアイオワ大学は25日、不正行為疑惑で少なくとも30人の学生を調査していると発表した。この調査に詳しい3人の関係者によれば、調査対象者の数はその2─3倍となる可能性もあるという。

 大学の広報担当者は、学生のプライバシー保護規制を理由に、対象となった学生の氏名を明かさず、国籍についてもコメントしなかった。

 だが、調査に近い関係者によれば、不正行為の容疑をかけられている学生のほとんど、恐らくすべてが中国籍だという。法学や経済学など少なくとも3つのオンライン講義における不正が告発されているという。調査対象となっている中国人学生のうち3人は、ロイターの取材に対して、中国人が経営する業者に替え玉受験を頼んだという。

 中間試験で替え玉受験を依頼したとされる4人目の中国人学生に対し、大学は8日、退学を勧告する旨の書簡を送った。「これまでの行動によって、今後の振る舞いについても疑念が生じているため、本学は、貴殿が将来的に不正行為を行わないという確信を持つことができない」とある。学生ビザで米国に滞在している外国人が退学となった場合、連邦移民法により本国送還となる可能性がある。

もてあそばれる米教育制度

 アイオワ大学での大量不正行為が示すように、暗躍する東アジアの業者たちは、入学試験での不正や、出願書類の捏造、代理出席・代理受験による単位取得によって米国の高等教育システムを腐敗させている。ずるがしこい業者たちは、学生たちが姑息な手段で大学に潜り込むことを支援するだけではない。大学を卒業させるための支援も提供しているのだ。

 こうした業者が成功を収めているのは、2つの交錯する利害に食い込んでいるからだ。中国人のあいだで海外留学の需要が高まっていること、米国の大学が、学費を満額払ってくれる外国人学生を受け入れて利益を上げたいと考えていることだ。

 一部の業者は大学入試で標準的に用いられているSAT(大学進学適性試験)の弱点につけ込んでいる。試験で不当な優位を得られるように、顧客に事前に問題を流しておくのである。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中