最新記事

タックスヘイブン

パナマ文書はどうやって世に出たのか

リーク元と接触した南ドイツ新聞の記者が明かす緊迫のやりとり。果たしてその正体は?

2016年4月6日(水)19時46分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

スイスにもあったチューリヒのモサク・フォンセカ法律事務所 Arnd Wiegmann-REUTERS

 パナマの法律事務所「モサク・フォンセカ」から流出した、金融取引に関する大量の内部文書。これを元に「パナマ文書リーク」の報道記事が続々と出ている。

 いったいどうやって情報がメディアの手に渡り、各社の報道につながったのか。

 ウェブサイト、ニーマン・ラボ(4月4日付)ワイヤード(4月4日付)の記事から、要点をまとめてみたい。

 法律事務所の内部文書は1977年から2015年12月までの期間のもので、1150万点に上る。文書のサイズは2.6テラバイトに及ぶという。ウィキリークスの手によって世に出た米外交文書リーク(「ケーブルゲイト」、2010年)が1.73ギガバイトであったので、これの1000倍以上になるという。

 1150万の文書ファイルには480万の電子メール、100万の画像、210万のPDFが入っていた。

【参考記事】世紀のリーク「パナマ文書」が暴く権力者の資産運用、そして犯罪

経緯は

 2014年末、ある人物が南ドイツ新聞の記者に暗号化されたチャットを通じて連絡をつけてきた。記者の名前はバスチアン・オベルマイヤー(Bastian Obermayer)。その人物は「犯罪を公にしたい」と言ったという。実際に顔を合わせず、連絡は暗号化されたチャンネルのみでだった。そうしなければ「命が危なくなる」からだった。

暗号化されたチャットをその都度消去

 オベルマイヤー記者とリーク者は常に暗号化されたチャンネルで連絡を取り合い、どのチャンネルを使うかは時々変えた。それまでのコミュニケーションの内容をその都度、削除したという。暗号アプリの「シグナル」、「スリーマ」や、PGPメールなどを使ったというが、オベルマイヤーはどれをどのように使ったかについて、ワイヤードに明らかにしなかった。

 新たなチャンネルで連絡を始める際には一定の質問と答えを用意し、相手がその人物であることを互いに確認した。

 文書の一部を受け取った南ドイツ新聞は非営利組織の「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ、ワシントンにある)に連絡した。ICIJは過去にも大型リークの分析を担当した経験があったからだ。ICIJのスタッフはミュンヘンにある南ドイツ新聞に出かけ、どう処理するかを話し合ったという。

 この間、ファイルは少しずつ南ドイツ新聞に送られていた。メールで送るには大きすぎるが、どうやって送られたのかについて、南ドイツ新聞はワイヤードに明らかにしていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

米FRB議長人選、候補に「驚くべき名前も」=トラン

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資へ 米はF35戦闘機

ビジネス

再送米経済「対応困難な均衡状態」、今後の指標に方向
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中