最新記事

ノルウェー

「77人殺した囚人でも独房は人権侵害」という判断は甘すぎる?

2016年4月22日(金)18時38分
アレクサンダー・ナザリアン

 危険なのは、ときに法を順守する社会では、今回のように解決しない事態に直面することがあることだ。法的には正しいが、感情的には到底受け入れられない。つらいことだが、民主主義に反することはできない。

 ブレイビクの「勝訴」に怒りを覚えるのは簡単だ。しかしブレイビクの処遇の「快適さ」はアメリカの基準から見れば贅沢だが、彼がほとんどすべての時間(一日あたり1~2時間を除いて)を孤独の中で過ごしている事実は変わらない。

 長期間に渡る隔離収監は拷問だという考え方が例え一般的ではないとしても、本やDVDが人間との触れ合いを穴埋めすることはできない。すでに精神的に病んでいる受刑者にとっては特にそうだ。

キッチン・テレビ付き3部屋のスイートルーム

「実際には相手の身体に手を出さずに、肉体的に攻撃しているようなものだ」と、ロサンゼルスの元ギャングは2014年の本誌の取材に対して隔離への恐怖を語っていた。その後の2年で、ニューヨーク州やカリフォルニア州をはじめ各州が、隔離収監を減らす方針を打ち出した。

 またオバマ大統領は今年、連邦刑務所で未成年の隔離収監は止めることを明らかにした。長期間の隔離が「深刻かつ永続する心理的悪影響」を及ぼす可能性があるためだ。

 監視団体「ソリタリー・ウォッチ」によると、全米で約8万人が何らかの行政処置として隔離されている。彼らはブレイビクのように、キッチン・テレビ付き3部屋のスイートルームを与えられてはいない。

【参考記事】ロシア刑務所改革、囚人には悪夢?

 ブレイビクの勝訴は、ノルウェーの刑務所が「笑ってしまうくらい甘い」という反面教師ではない。独房収監という、まるで中世の時代のような処罰に対する糾弾だ。

 独房に関してはヨーロッパが「正しい」。サッカーと同じように、アメリカも見習わなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中