ニュース速報
ワールド

アングル:イランの革命防衛隊、戦争に備えてレバノンのヒズボラを再編

2026年03月24日(火)16時05分

3月23日、レバノンのチャートで、イスラエルの攻撃で破壊された家屋の前に置かれたヒズボラの旗。REUTERS/Yara Nardi

Laila Bassam Tom Perry Samia Nakhoul Maya Gebeily

[ベ‌イルート 21日 ロイター] - 米・イスラエルとイランの戦争において、‌イランの同盟勢力であるレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラが大き​な役割を果たしている。2024年にイスラエルによって壊滅的な打撃を受けたヒズボラだが、イランの「イスラム革命防衛隊(IRGC)」が将校を投入して欠員を埋めるなどして軍事⁠指揮系統を再建していた。IRGCの活動に詳しい情報筋2人​が明かにした。

1982年にIRGCによって創立されたヒズボラがこのような抜本的な再編を行うのは初めて。24年にイスラエルの攻撃で指導者ナスララ師ら最高幹部が殺害された後、IRGCが直接的な関与を強めている実態が明らかになった。

イランによるてこ入れは実を結び、ヒズボラは米国とイスラエルによる攻撃に間に合う形で再建を果たし、イランに加勢して参戦している。ロイターは3月上旬、ヒズボラが戦争は避けられないとみて数カ月にわたり準備を進⁠めていたと報じた。

IRGCの活動に詳しい2人の情報筋によると、IRGCは将校を派遣して戦闘員を再訓練し、再武装を監督した。また、イスラエル情報機関の侵入を許していたヒズボラの指揮系統も再構築した。

イスラエル軍の報道官は3月12日、この3年間でヒ⁠ズボラに大き​な打撃を与えたが、同組織は依然として重要な脅威であり続けていると述べた。

ヒズボラは3月2日に参戦して以来、イスラエルに向けて数百発のミサイルを発射。イスラエルが反撃し、レバノン国内で1000人以上が死亡した。

ヒズボラの戦闘員は、レバノン南部を掌握したイスラエル軍兵士と交戦を続けている。ヒズボラの現在の戦力は、数年前のピーク時に及ばない水準にあり、イスラエルによる全面侵攻が発生した場合にどのような結果になるか不明だ。

<階層構造の解体>

2人の情報筋によると、ヒズボラの再建支援を託されたIRGCの将校らは、24年11月の停戦直後に現地入りし、イスラエルによる攻撃が続く中で活動を開⁠始した。

そのうちの1人は、約100人の将校が派遣されたと述べた。

彼らの指示で、それまでの階層的な指揮系統が、‌互いの作戦内容について限られた情報しか持たない小規模な部隊からなる分散型指揮系統に置き換えられた。また、IRGC将校らは、イランとレ⁠バノンから同⁠時にイスラエルにミサイルを発射する攻撃計画も策定したという。この作戦は3月11日に初めて実行された。

レバノンの治安当局の高官は、イランの指揮官らがヒズボラの軍事幹部の再建と再編成を支援したと語った。この高官は、イラン側は標的選定の詳細に関与している訳ではなく、現在の紛争に計画的に対処できるようヒズボラを支援していると見ていると述べた。

この件について説明を受けた別の情報筋によると、IRGCは24年に将校をレバノンに派遣し、ヒズボラの戦後検‌証を行い、その軍事部門を直接監督した。

さらに別の2人の情報筋は、IRGCが昨年、ヒズボラの軍事活動の指揮支援のため、特別​顧問を同組織‌に派遣したと述べた。

キングス・カレッジ・ロン⁠ドンのアンドレアス・クリーグ講師は、ナスララ師の死の​前に形成されていた階層的な組織からフラットな組織体系へとIRGCがヒズボラを再編したと指摘。

「現在の分散型モデルは、極めて小規模な細胞組織からなる1980年代のヒズボラの姿に少し似ている」と同氏は分析。イラン国内のIRGCでも採用されている「モザイク防衛」だと表現した。

<国外退去を要請>

IRGCのこうした動きとは対照的に、レバノン政府と米国の支援を受けた軍は同時期にヒズボラの武装解除プロセスを進めようとしていた。

レバノンの当局者によると、IRGCとのつながりを含め、通常の外交機能を超えた形で‌イラン政府と関係を持っているイラン国籍者がレバノンには100─150人いると推定されている。

同当局者は、レバノン政府が3月上旬、これらの人物に対しレバノンからの退去を求めたと明かした。

IRGCの動きに詳しい2人の情報筋によると、3月7日にベイルートから​ロシア行きの航空機で出国した150人以上のイラン人の中には、IRGC組織の将校も含ま⁠れていたという。

24年の停戦から今回の戦争が勃発するまでの15カ月間に、レバノンでイスラエルの攻撃により死亡した約500人には、IRGCの隊員も含まれていた。また、3月8日にベイルートのホテルが被害を受けた空爆を含め、今回のイスラエルの攻撃によりさらに十数人が死亡したと、同筋は述べた。

IRGCは、1979年のイラン・イ​スラム革命を広め、82年にレバノンに侵攻したイスラエル軍と戦うために、同組織の隊員がレバノン東部ベカー高原にヒズボラを設立して以来、同組織と密接に関わってきた。

2020年に米国のドローン攻撃で殺害されたIRGCのソレイマニ司令官は、06年のヒズボラ対イスラエル戦争においてナスララ師と共闘していた。ベイルート南郊の地下壕にいたナスララ師がイスラエル軍の攻撃で殺害された際、共に死亡した中にはイラン人将軍も含まれていた。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ企業、海外事業をさらに悲観視 イラン戦争前=

ワールド

EXCLUSIVE-韓国年金基金がドル売却、ウォン

ワールド

イラン、イスラエルにミサイル攻撃 トランプ氏の「交

ビジネス

三井住友FG、米ジェフリーズ買収を検討=FT
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 4
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 5
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 6
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 7
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 8
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 9
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 10
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中