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20代で資産10億、「アイデア不要論」を語る

2016年4月13日(水)18時09分

 柔道を熱心に練習した結果、一本背負いを覚えたとします。努力の成果が得られたわけですが、では実際にこの技を誰にでもかけられるかというとそれはまた別の話で、うまく一本背負いをかけられるかどうかは相手次第ということになります。

 この話は、ビジネスにも置き換えることが可能です。

 ビジネスアイデアや戦略が浮かび、これを具体化できれば絶対に儲かるはずだと確信したとします。この「アイデア」が、柔道の話で出てきた「一本背負い」です。

 技がかけられるかどうかは相手によって決まってくるのと同じで、いくらアイデアを具現化できたとしても、それが実際に売れるかどうかは、消費者の動向や競合他社の状況、もしくはテクノロジーや法改正などの外的要因にゆだねられることになるのです。「これはウチだけの唯一の商品だ」と思って開発した商品でも、大手に一瞬で真似され、低価格で販売されたら、ビジネスは窮地に立たされます。

 ビジネス運営というのは常に外的要因によって左右されるものであり、実に受動的なのです。

 確かに起業というのは、いくつかのアイデアや戦略があり、それを具現化して売り出したいという動機で始めることになるのでしょうが、それはあくまでもスタートした時点での話です。実際に起業して会社を経営するようになってからは、降りかかってくるトラブルや変わりゆく外部環境の中、次にどのような手を打とうかと後手に考えることのほうが多くなります。

 多くの人の意見とは異なるかもしれませんが、僕自身は、ビジネスにおけるアイデアや独創性、創造力はそれほど重要だとは捉えていません。

 それよりも大切なのは、知識量や認識力ではないでしょうか。業界や業界構造に関する知識、または市場のニーズなどに対する認識があれば、ビジネスの進め方がなんとなくわかってくるはずです。素晴らしいアイデアや戦略を持っていることよりも、適切な状況分析を重視し、今思い切って投資をすべきなのか、すべきではないのかという判断や、事業を方向転換すべきなのか、すべきではないのかの判断能力を高めるほうが優先度合は高く、特別なひらめきはさほど必要ありません。

 起業当時、僕はいいアイデアを思いついたらとても喜んでいました。ところが、証してみると、だいたい自分が思いつくようなアイデアはすでに他の誰かが具現化していたり、あるいは他の企業がいち早く試し、何らかの理由ですでに頓挫していたりするものばかりでした。また、いいアイデアだったとしても大手に真似されることを考えると手の打ちようがなく、実行するに至らないこともありました。いざ実行に移しても、業界の参入コストを見誤り大損した経験もあります。

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