最新記事

2016米大統領選

トランプ氏の公約、TPP反対や円安批判も

弁舌に頼りすぎて政策は曖昧との批判が出ているトランプ氏の政策とは?

2016年3月3日(木)10時46分

3月2日、米大統領選の「スーパーチューズデー」で優勢となった共和党のドナルド・トランプ氏。ただ、政策は曖昧との批判が一部党内からも出ている。フロリダ州パームビーチで1日撮影(2016年 ロイター/SCOTT AUDETTE)

米大統領選の民主・共和両党の候補指名争いにおける最大のヤマ場となる1日の「スーパーチューズデー」で、共和党ではドナルド・トランプ氏が優勢となった。ただ共和党内の一部からも、弁舌に頼りすぎている一方で政策は曖昧との批判が出ている。

トランプ氏が打ち出している貿易、税制、経済、移民、ヘルスケア、国防に関する政策を以下にまとめた。

<貿易>

中国、日本、メキシコ、ベトナムおよびインドに対し、自国通貨を下落させ米国からの輸入品を排除することで米国から「略奪している」と非難。

環太平洋連携協定(TPP)には署名せず別途、北米自由貿易協定(NAFTA)に関しメキシコ、カナダと再交渉を目指す。

中国は通貨を操作していると指摘し、同国の輸出品には相殺関税を課す方針。政府による輸出業者への助成制度を世界貿易機関(WTO)に訴える意向。

中国との貿易関係の改善を目指し、著名投資家のカール・アイカーン氏を交渉役に任命。アイカーン氏は喜んで助言はすると述べたが、トランプ氏が大統領に就任した場合に正式な役職に任命されることは望んでいないとしている。

航空機エンジン・機械大手ユナイテッド・テクノロジーズ子会社が、エアコンの生産拠点をインディアナ州からメキシコに移すと発表したことを受け、35%の関税をかけると表明。メキシコ製のフォード車にも同様の課税を行う。

<税>

減税と税制簡素化を公約。

年収2万5000ドル未満の単身世帯と年収5万ドル未満の夫婦世帯は所得税を免除する。

税率区分数を現在の7から削減。所得税の最高税率を25%とし、長期キャピタルゲイン・配当収入税の最高税率を20%とする。

慈善事業への寄付や住宅ローン金利の控除制度は変えない。他の控除については最高税率区分で削減。

代替ミニマム税と遺産税の撤廃、投資運用会社が成功報酬として受け取る「キャリードインタレスト」向け税制優遇措置を廃止。

法人税の最高税率を現行の35%から15%に引き下げ。

米企業の海外留保利益については税率10%のみなし課税を実施し、課税繰り延べを廃止。

<経済>

雇用促進と政府のコスト削減で19兆ドルの財政赤字を解消すると公約。ただ、その方法について正式な政策案を公表していない。

メディケア(高齢者向け公的医療保険)とメディケイド(低所得者向け公的医療保険)、退職者向けの社会保障は削減しない一方、教育省と環境保護局(EPA)の規模を縮小する。

<移民>

不法移民の流入を防ぐため、メキシコとの国境に高い壁を築くと約束。費用は100億─120億ドルに上ると試算。

メキシコが費用を負担しなければ重大な結果を招くと指摘。不法に滞在している労働者によるメキシコ向けの送金を「押収」するほか、メキシコ人労働者に対するビザや越境手数料を引き上げる。メキシコ製品に関税を課したり、対外援助を削減したりすることも「選択肢」。

米国に居住する1100万人の不法滞在者を強制送還するとともに、不法移民でも米国で生まれた子どもに市民権を与える制度も廃止する。

イスラム教徒に対する米入国一時禁止を呼び掛け、シリア難民は受け入れない。

国境監視員の数を3倍に増やす。従業員が合法的に米国に滞在していることを確認するため、全ての企業に対して「E─Verify」データベースの利用を義務付け。

連邦政府による不法移民の強制送還に協力しない「(不法移民)保護都市」には連邦政府資金の提供を留保する。

新たなグリーンカード(米国永住権)の発行を「中止」し、雇用主に米国人労働者を優先的に雇用することを義務付ける。

<ヘルスケア>

医療保険制度改革法(オバマケア)を撤回し、医療貯蓄口座制度に置き換える。

保険会社に対して、持病のある人にも保険を適用するよう義務付ける。これはオバマケアの主な特長でもある。

競争を促すため、州境をまたいだ保険販売を容認する。

製薬会社との価格交渉を通じ、政府は3000億ドルの節約が可能と試算。

<イスラム国(IS)関連>

すぐに「打ち負かす」とし、ロシアとの協力にもオープン。資金源である石油を爆撃。

尋問をめぐり、米国法で拷問として禁じられている水責めを復活させる。さらに過酷なその他の方法も支持。

IS戦闘員の家族を「連れ出し」、戦闘員の勧誘阻止に向けインターネットの「エリア」を閉鎖。

シリア国内にシリア難民のための「安全地帯」を設置。資金は湾岸諸国に拠出させる。

アサド大統領の今後を考えるより、まずIS対応を優先すべき。

米国のシリア反政府勢力への支持を疑問視。

<国防>

「誰も米国に干渉できないよう」米軍の規模と能力を拡充。

軍が望まない装備の購入に大金を費やしていると現状を批判。

日本、ドイツ、韓国、サウジアラビアに対し、米国が提供している軍事支援のコスト負担増大を要請。赤字を理由に「もはやこれらの国全てを守ることはできない」と発言。

自身のウェブサイトで「中国の冒険主義を思いとどまらせるため」東シナ海と南シナ海で米軍の存在感を高めると明言。

[ワシントン 2日 ロイター] -

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中