最新記事

災害

東日本大震災から5年、津波に引き裂かれた被災地の今

津波と原発事故に襲われた住民たちに、かつての平穏な日が戻るのはいつか

2016年3月11日(金)19時16分

3月11日、東日本大震災からきょうで丸5年。M9.0の未曾有の地震が引き起こした大津波は街を飲み込み、1986年のチェルノブイリ事故以来最悪の原発事故を招いた。写真は被災地と犠牲者のための祈りの灯。都内で10日撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

 2011年3月11日に発生した東日本大震災からきょうで丸5年。マグニチュード(M)9.0の未曾有の地震が引き起こした大津波は街を飲み込み、1986年のチェルノブイリ事故以来最悪の原発事故を招いた。

 震災による死者・行方不明者は約1万8500人、関連死を含めると犠牲者は2万1000人を超える。16万人が住居と生計の手段を失った。

 津波により東京電力<9501.T>福島第1原子力発電所の原子炉3基がメルトダウンし、放射能汚染が広がった。原発付近に住む16万人以上が避難を余儀なくされ、その約10%が福島県内の仮設住宅で今でも生活している。

 避難した住民の大半は故郷を離れ、新たな生活を始めた。一部の地域は、高い放射線量のため帰還が今なお困難な状況にある。

 「ふるさと双葉町を返せ」と書かれたプラカードが10日夜、都内の東電本店前で行われた反原発の抗議デモで掲げられた。他にも安倍晋三首相を批判し、原発廃止を求める人々が集結していた。

 約17メートルの津波に見舞われ、市街地全体が飲み込まれた岩手県陸前高田市は人口の7%を失った。

 深い悲しみが今でも住民の心を苦しめている。

「いまだに傷が癒えないというのが実情だ。新たな生活をスタートさせるのに苦しんでいる人がまだたくさんいる」と、元市職員の男性(65)は話す。勤務していた4階建ての市役所は津波で大半が水没した。

犠牲者にささげる黙とう

 都内で11日開催された政府主催の追悼式には安倍首相や被災者を含めた約1200人が参加。天皇、皇后両陛下もご臨席した。地震が発生した午後2時46分には犠牲者を悼み、全国各地で黙とうがささげられた。

 追悼式では、宮城県遺族代表の木村正清さんが、「お父さん、あの日、何度も電話しましたが、出てくれませんでしたね」と語りかけた。「基礎を残し跡形もなくなった土の上に、生前の両親の姿を映し出すかのように、折り重なるようにして見つかった夫婦茶わん。この夫婦茶わんが唯一の形見になってしまった」と語った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

仏、政府閉鎖回避へ緊急つなぎ予算案 妥協案まとまら

ワールド

米大統領、史上最大「トランプ級」新型戦艦建造を発表

ワールド

韓国中銀、ウォン安など金融安定リスクへの警戒必要=

ビジネス

米国との貿易協定、来年早々にも署名の可能性=インド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中