最新記事

中国著名企業家アカウント強制閉鎖――彼は中国共産党員!

2016年2月29日(月)19時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

締め付け強まる 言論は党と政府を擁護するものでなければ困るという論理 PashaIgnatov-iStock.

 中国の著名企業家で3700万人ものフォロワーがいる任志強氏のアカウントが、党と政府の批判を続けているとして閉鎖された。任氏は中国共産党員。党員としての発言の自由は、どこまで認められるのか? 彼の真意は?

当局がアカウントを閉鎖した理由

 2月28日、国家インターネット情報弁公室は、新浪や騰訊など中国の大手ウェブサイトに対して、任志強氏のアカウントを閉鎖するよう命じた。「ユーザーは法と社会主義制度、国家利益の限度を守らなければならない」というのが理由だ。

【参考記事】習近平が振り回す「絶対権力」の危うさ

 任志強氏は不動産会社の社長であると同時に、中国共産党員でもある。

 しかし彼は常に中国共産党と中国政府の現状を激しく批判する言論を「微博(ウェイボー)」(中国式ツイッター)や「微信(ウェイシン)」(ウィーチャット、WeChat)などで展開してきた。

 2月25日付の本コラム「メディア管理を強める中国――筆者にも警告メールが」に書いたように、習近平国家主席は中国共産党の総書記として、2月19日に党と政府の宣伝機関である人民日報社、新華社、中央テレビ局を訪問したあと、「重要講話」を発表している。

 これに対しても任志強氏は咬みついた。



 人民と党が二つの陣営に分かれてしまったのか? すべてのメディアには「党」という姓名があり、しかもそれは人民の利益を代表していない。人民は(党によって)忘れ去られ、捨て去られていく存在なのか? メディアは人民の利益を代表すべきだ。

 おおむね、こういう趣旨の内容だが、ネットが燃え上がり次々に転載されていった。彼はネットユーザーに好まれ、「任大砲」というニックネームがついているほどだ。

 すると官製メディアは「新メディア時代に、党のメディアが党の姓を名乗るのは政治の基本原則だ」として任志強氏の言論を攻撃。

【参考記事】香港「反中」書店関係者、謎の連続失踪──国際問題化する中国の言論弾圧

 中国青年網なども、「任志強を党員の隊列から排除しなければならない」として論陣を張り、任志強氏の党籍を剥奪すべきだという主張がネットに数多く表れ始めた。これはまさに政府側に立ってコメントをネットに書き込む「五毛党」の仕業だろう。

 こういう流れの中で2月28日に当局は任志強氏のアカウントを強制閉鎖させたわけである。

 その夜、中央テレビ局微信が「言論の自由には法律の境界がなければならない」という見出しの評論を発表。それによれば――。


(概要)共産党員としての任志強のインターネットにおける言行は、党の紀律と規定による検査を受けなければならない。このことに関して主体的責任を有する党組織の関係者は、その職責を果たすよう期待する。

 中国にはどのような組織にも「党組織」というのがあり、その組織が「正しく」運営されているか否かを常に検閲する義務を負っている。その長は、各組織の党書記だ。「各民営ウェブサイトの経営者も党紀を守らないと、どういうことになるか分かっているな?」という警告でもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは小動き146円後半、週後半の動意に

ワールド

ニュージーランド、裕福な外国人投資家に住宅購入認め

ワールド

習・プーチン両氏、新たな世界秩序ビジョン共有 SC

ワールド

トランプ氏と至った「理解」、ウクライナ和平へ道開く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマンスも変える「頸部トレーニング」の真実とは?
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    「体を動かすと頭が冴える」は気のせいじゃなかった⋯…
  • 6
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 7
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中