最新記事

インタビュー

「ホームレス」を生み出さない社会を目指して

2016年2月25日(木)15時42分
WORKSIGHT

wsHomedoor_5.jpg

釜Meetsの一コマ。NPO法人「炊き出し志絆会」の炊き出しにも参加している。

パワフルな海外ボランティアに触発されて

 転機が訪れたのは高校2年のとき。ホームレス問題についての活動を認められてボランティア・スピリット賞(アワード)を受賞し、米国ボランティア親善大使に選ばれたんです。それまでは自分の活動に自信がなかったのですが、そこで初めて認められたという手応えをつかめた感じですね。

 ワシントンD.C.の表彰式では各国の親善大使と交流できましたが、みんなの活動のパワフルさに圧倒されました。同世代の子が1,000万円くらい寄付金を集めていたり、企業を巻き込んで商品パッケージにボランティアの広告を載せてもらったりしている。

 同世代でもここまでできるんだと感嘆しつつ、改めてわが身を振り返って、私が本当にやりたかったのはホームレス問題の根本的な解決なんだと思い至りました。それまで私がしていた啓発や炊き出し参加などのボランティアはホームレス状態を改善するだけの対症療法的なものです。もちろんそれはそれで意味のあるものだけれども、私がしたいことは日本の社会構造をホームレス状態を生み出さないものにしたいという、ホームレス問題の根本的な解決です。Homedoorのビジョンが固まったのはこのあたりでしたね。

 その後、ホームレス問題の研究が進む大阪市立大学に進学し、2年生のときにHomedoorを立ち上げたというわけです。

 自己完結的に小ぢんまりと終わってしまいそうだった活動を転換して、企業や地域と連携して実行性の高い活動へ発展させることができた。世界のボランティア活動家と交流できたことで得られた成果は大きかったです。

WEB限定コンテンツ
(2015.6.23 大阪・コクヨ梅田オフィスにて取材)

※インタビュー後編:事業に必要な人を口説き落とせる、それが本当のリーダーシップ

wsHomedoor_site.jpgNPO法人「Homedoor(ホームドア)」は「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造を作る」ことをビジョンに掲げ、野宿生活者(ホームレス)をはじめとする生活困窮者への就労支援・生活支援、ホームレス化予防事業、ホームレス・生活保護問題に関する啓蒙活動などに取り組んでいる。拠点は大阪市北区。2010年4月設立。http://www.homedoor.org

* 川口氏によれば、日本の労働人口に占める日雇い労働者の割合は1.7%程度だが、ホームレスの人で日雇い労働の経験を持つ人は4分の1に上る。また、ホームレスの人には非正規雇用者も多く、条件の悪い仕事が社会的弱者に押し付けられている状況だと指摘する。

wsHomedoor_portrait.jpg川口加奈(かわぐち・かな)
1991年、大阪府高石市生まれ。大阪市立大学卒業。14歳でホームレス問題に出会い、ホームレス襲撃事件の根絶をめざし、炊出しや100人ワークショップなどの活動を開始。19歳でHomedoorを設立し、シェアサイクルHUBchari事業等でホームレスの人や生活保護受給者累130名以上に就労支援を提供する。世界経済フォーラム(通称・ダボス会議)のGlobal Shapersや、ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013若手リーダー部門にも選出される。

※当記事はWORKSIGHTの提供記事です
wslogo200.jpg


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、S&Pが終値で最高値 グロース

ビジネス

再送-11月の米製造業生産は横ばい、自動車関連は減

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、GDP好調でもFRB利下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中