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パレスチナ人の一斉蜂起「インティファーダ」は防げるか

2016年2月3日(水)16時00分
ベン・リンフィールド

 今回、イスラエル軍はパレスチナ人の不満に一気に火が付くような措置をおおむね自重している。例えば分離壁のゲート閉鎖だ。閉鎖すれば、パレスチナ人はイスラエル領内やユダヤ人入植地に働きに行けなくなる。

【参考記事】インティファーダを警戒、イスラエル市民に「銃携帯命令」


 もう1つ、「第3次インティファーダ」を防ぐ決定的な要因がある。パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長(80)が、一連の襲撃に対して厳しい姿勢を見せていることだ。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はアッバスが暴力をそそのかしていると公然と非難しているが、イスラエルの治安専門家の見方は違う。自治政府は暴力的な抵抗をやめるよう呼び掛け、インティファーダの発生を防ごうとしているというのだ。

 第2次インティファーダが収束した後、アッバスは武力闘争を放棄し、西岸でのイスラエルの占領を非暴力の抵抗で阻止しようと同胞に呼び掛けてきた。しかし、多くのパレスチナ人はこのメッセージに背を向けるだろう。

 パレスチナ政策調査研究センター(PSR)が昨年12月に実施した世論調査では、パレスチナ人の67%がナイフによる襲撃を支持した。一連の襲撃が「武力によるインティファーダ」に発展すれば、交渉を行うよりも自分たちの要求が通る可能性が高くなると答えた人が66%にも上った。現状を改善できないアッバスが穏健路線を掲げても、民心離れは止まらないということだ。

 カランディア・キャンプでは、亡くなった若者の遺族が身内の「名誉ある死」を誇らしげに語っていた。ユダヤ人入植地を車で襲撃して死亡した若者の父親は、お悔やみの言葉は要らないと言った。「息子の殉教を祝福してくれ」。その笑顔は引きつっていた。

 キャンプの若者たちの多くはこの父親と同じ考えだ。彼らの望みは一連の襲撃が第3次インティファーダに発展し、カランディアがその象徴の地になること。「今やめるわけにはいかない。僕らが死んでも、後に続く者たちがいる」と、22歳のフセイン・シェハデは息巻く。

 アッバスは違う考えらしい。パレスチナの若者がイスラエル軍と直接対峙するのを阻止しようと、パレスチナの治安部隊を投入している。西岸の都市ラマラでは昨年の12月25日、数百人がユダヤ人入植地ベイトエルのイスラエル軍検問所を目指してデモ行進を開始。アッバスの議長警護隊に行く手を阻まれ、参加者は私服警官に警棒で殴られたと、デモ参加者は証言する。

【参考記事】ヨルダン川西岸に入植するアメリカ人」

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