最新記事

テロ

「パリは隙だらけ」週刊誌襲撃から一年目に再び起きたテロ

テロの衝撃が、歴史的に街頭デモで意思表示をしてきたパリ市民の伝統を変えてしまうのか

2016年1月8日(金)16時00分
ジョシュ・ロウ

癒えない傷 昨年続いたテロがパリの市民に与えた衝撃は余りにも大きかった Charles Platiau-REUTERS

 昨年1月にパリの風刺週刊誌シャルリ・エブドの本社が襲撃されて17人が殺害されてからちょうど一年目にあたる今週7日、パリ北部の警察署に刃物を持った男が「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら侵入し、警察に射殺された。

 フランス検察当局などによると、この男はテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)の旗やISISによるものという犯行声明が書かれた紙を持っていた。

 今回の犯行とISISの関連はまだわかっていないが、昨年の襲撃事件からちょうど一年目の日に事件が起きたことに、パリの市民は衝撃を受けている。

「この日、特にパリは緊張していた」と、地政学講師のミシェル・レミューは話している。「テロリストたちが、市民の身近に存在していることを思い知らせるために何らかの行動を起こすだろうと、多くの市民は予測していた」

「(我々は)隙だらけだ。まったく隙だらけだ」と、レミューは嘆いている。

 レミューの友人で、シャルリ・エブドに寄稿していた精神科医のエルザ・チャヤットは、昨年襲撃事件が発生した時、編集部にいたために殺害された。「私は57歳だが、その時は赤ん坊のように泣いた。エルザがどれだけ柔軟で、偏見の無い女性だったか。移民に対しても固定観念は持っていなかった。とてもオープンな人だった」

 パリ在住のイギリス人作家ルーシー・ワダムは、この一年でパリの街が大きく変わったと話している。「シャルリ・エブド襲撃事件の後も、パリの人々はそれまでのやり方を変えず、街頭に出てデモに参加していた。フランスの歴史の中で繰り返されてきたのと変わらない反応だった」

「しかし昨年11月の同時テロの衝撃は余りに強烈だった。パリの人々は怒りの中で、街頭デモで何かを変えられるとは信じられなくなってしまった」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マイクロプラスチックを血中から取り除くことは可能なのか?
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    ハムストリングスは「体重」を求めていた...神が「脚…
  • 10
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中