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エボラに性感染の恐れ、回復した患者から

昨年の感染拡大から1年が経過し、事態は終息に向かっていると思われたが 

2015年10月16日(金)17時30分
コナー・ギャフィー

「危険、入るな」 エボラ患者の入院エリアを仕切るビニールのカーテン Ricardo Rojas-REUTERS

 昨年、西アフリカで発生したエボラ出血熱の感染拡大は、近年の感染症対策では最悪の事態となった。これまでの死亡者はリベリア、シエラレオネ、ギニアで1万1000人以上。ヨーロッパとアメリカで感染が広がったケースもあった。

 それでもウイルスの根絶対策は多大な効果をあげている。昨年の感染で最も多くの死亡者を出したリベリアは今年9月、新たな感染が42日間確認されなかったことから、2度目の終息宣言を出した。またシエラレオネでも、過去4週間新たな患者が発生していないため終息状態に近づいている。一方、世界保健機構(WHO)は7月、この夏ギニアで実施された臨床試験で、エボラ出血熱のワクチンがほぼ100%の予防効果を上げたと発表した。

 しかし、新たな研究からエボラ出血熱が回復後の患者から性交渉で感染する可能性のあることがわかった。またイギリスでは、一度回復した医療従事者の女性の症状が再発して重体に陥り、感染への不安が再び高まっている。本誌記者コナー・ギャフィーが、ランカスター大学講師(生命科学)のデレク・ギャザラーに話を聞いた。

――感染の不安が再び高まっているのはなぜか?

 今週、医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」でエボラ出血熱に関する新たな2つの研究結果が掲載された。1つ目の研究では、エボラから回復した男性患者の精液中に、最長9カ月間ウイルスが残っていることがわかった。これまでウイルスは最長でも82日間しか確認されていなかった。

 2つ目の研究では、回復した男性患者からパートナーの女性への感染(この女性はその後、発症して死亡)が、ウイルス解析から確認された。昨年の感染拡大で症状が回復した患者は約1万7000人いる。性交渉で感染を広げる可能性のある「感染源」がそれだけ多数いることになるのかもしれない。

――エボラの治療を受けて完全回復したはずのイギリス人女性が、再入院し重体になっているのはなぜか?

 彼女の症状がエボラによるものかどうかはまだ確認されていないが、もしそうだと確認されれば、エボラから回復した後、再びエボラのせいで重体に陥った初めての症例になる。

――エボラ出血熱は性交渉で感染するのか?

 今回発表された研究結果で、その確かな証拠が示された。今年3月末に死亡したリベリアの女性患者は、おそらく回復した男性患者から感染している。ギャザラーによれば、今回の研究結果は、エボラ出血熱が性交渉で感染する「確実な証拠」を示している。

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