今月6日に80歳の誕生日を迎えた、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世。彼が死去すれば中国はその座に傀儡を置き、ダライ・ラマの転生制度を骨抜きにする可能性が高い。

 中国は既に、第2位の高僧パンチェン・ラマを独自に擁立している。95年にダライ・ラマがパンチェン・ラマ11世に認定した当時6歳の少年は直後に中国当局に誘拐され、今も「政治犯」として拘束されている。第3位の高僧カルマパ17世は、99年に中国を脱出してインドに亡命した。

 今年はチベットにとってもう1つ区切りの年でもある。中国が「チベット自治区」を発足させてから50年になるのだ。ただし、この名称は大きな誤解を招く。チベットは中国の支配下にあり、歴史的なチベット地域の半分近くが中国の行政区に組み入れられている。

 50~51年に中国はチベットに侵攻して制圧し、アジアの戦略地政学的な地図を塗り替えた。インド、ネパール、ブータンの「隣国」となり、チベットを源とする重要な河川システムを掌握している。

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 中国にとって、437年の歴史を持つダライ・ラマの転生制度を牛耳ることは、チベット支配の最後の仕上げだ。ダライ・ラマ14世は59年にインドに亡命して以来、国際社会において、中国のチベット支配への抵抗の象徴となってきた。しかし、近年は中国の国際的な影響力が高まり、外交的および経済的な圧力を受けてダライ・ラマの入国を拒否する国が増加している。

 07年に中国はチベット仏教の高僧の転生について、政府の承認がなければ違法とする条例を制定した。要は、ダライ・ラマの後継は自分たちが選ぶと宣言し、14世の死を待っているのだ。ムソリーニがローマ法王(教皇)を指名できるのは自分だけだと主張するようなものだ。

 女性に生まれ変わるかもしれない、存命中に後継を指名するかもしれない──高齢のダライ・ラマは自身の転生について、さまざまな可能性を公に語ってきた。転生者は中国支配下のチベットではなく、「自由な世界」で見いだされるとも述べている。