最新記事

テロ対策

ISIS支持の投稿だけで逮捕されるイギリスの治安事情

イギリスのテロ対策がアメリカより厳しいのは、IRAのテロに手を焼いた時の法律が適用されるため

2015年2月19日(木)16時36分
コリーン・パーティル

厳戒態勢 IRAの頃にはなかったインターネットが今は主戦場に Luke MacGregor-Reuters

 アメリカ政府の主催で17日からワシントンで「暴力的過激主義対策サミット」が開催されている。この場で協議される中心的な課題の1つは、ソーシャルメディアでの過激派との戦いだ。これはイギリスの対テロ戦略にも組み込まれているが、イギリスの治安当局はFBI(米連邦捜査局)とは異なるアプローチを採用している。

 アメリカでは、フェイスブックやツイッターへの投稿内容から、ある人物がテロ組織に関与している疑いが持たれた場合、FBIの覆面捜査官がその人物に接触するなどして、犯罪を計画していることを示す証拠をつかみ、逮捕に至る。連邦議会議事堂へのテロ攻撃未遂で、先月逮捕されたオハイオ州のクリストファー・リー・コーネルの事例がこれに当たる。

 一方、イギリスではインターネット上でテロ組織への支持を表明するだけで犯罪になる。特にここ数日、ネット上での発言を理由に逮捕される容疑者が続出している。

 17日朝には、マンチェスターとバーミンガムの間の町ストークオントレントに住む29歳の男がネット上にテロをあおる書き込みをした容疑で逮捕された。この男はテロ組織のメンバーとみられている。「ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)に言及したオンライン上の疑わしい投稿」に気づいた市民の通報で逮捕に踏み切ったと、地元の警察は発表している。この男はただちに公共の安全を脅かす危険性はないと判断され、釈放されたが、引き続き警察の監視下に置かれる。

 16日には、マンチェスター郊外のテムサイドでテロを計画した容疑で16歳の少年と少女が逮捕された。2人はイスラム過激派との関係はないとみられているが、やはりウェブ上での活動が捜査当局の目に留まり、逮捕につながった。マンチェスターの警察は18日朝、少女を不起訴処分で釈放したと発表した。

 14日朝にもロンドンの警察が、ネットを通じてテロの実行に役立つ情報を収集していた32歳の男を逮捕したばかりだ。この男はISISのメンバーとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

南アCPI、11月は前年比+3.5%に鈍化 来年の

ワールド

トランプ氏、国民向け演説で実績強調 支持率低迷の中

ワールド

ドイツ予算委、500億ユーロ超の防衛契約承認 過去

ビジネス

「空飛ぶタクシー」の米ジョビ―、生産能力倍増へ 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中