最新記事

イスラム過激派

パイロットも殺害していた「イスラム国」の非道

残酷さと執拗さをエスカレートさせた動画を公開したISISに対し、ヨルダンも即座に報復

2015年2月4日(水)15時18分
アレッサンドリア・マシ

悪魔の挑発 人質殺害のニュースに怒り、首都アンマンで報復を求めるヨルダンの人々 Ahmad Abdo-Reuters

 イスラム教スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)は3日、ヨルダン空軍のパイロット、モアズ・カサスベ中尉の「処刑」場面とする映像を公開した。カサスベは昨年12月、ISISに対抗するアメリカ主導の「有志連合」の空爆作戦に参加中、搭乗していたジェット戦闘機が墜落して拘束されていた。

 ヨルダン政府はカサスベの死亡を確認。しかも軍によると、ISISがカサスベを殺害したのは約1カ月前の先月3日だったという(根拠は不明)。先月末以降、ヨルダン政府は収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放と引き換えに、カサスベや日本人ジャーナリストの解放を求めて交渉を続けていたが、その時点でカサスベは死亡していたことになる。

 ISISは今週「信者たちの心の癒し」という動画をネット上で公開し、そこには「処刑」とされる凄惨な映像が含まれている。動画からのキャプチャ画像もISIS関連のツイッターで拡散されているが、個々の写真の真偽は定かではない。

 これまでのISISの動画と同様、今回の動画もニュース映像から始まる。ヨルダンのアブドラ国王が、国軍のパイロット全員が有志連合にすすんで参加したと語る映像だ。

 その後カサスベが姿を見せ、用意された声明原稿を読み上げる。シリアの都市ラッカを攻撃する有志連合の空爆に、どこの軍隊から何機が参加しているか説明している。

 動画の音声は、カサスベの殺害について、ヨルダンが有志連合に参加したことが理由だと語っている。有志連合にはヨルダンを含めて約60カ国が参加しているが、その関与の度合いは国によって様々だ。

 オレンジのつなぎを着せられたカサスベと見られる人物は、ベージュ色の戦闘服とマスクを身に着けたISISの兵士と見られる一群に囲まれ、檻に入れられている。檻の中の人物には全身に燃料のようなものがかけられ、地面に撒かれた燃料が導火線のように続いている。そこに火が放たれる。

 この事態にヨルダン政府は、ISISへの「報復」と「制裁」を宣言。直後に、リシャウィの死刑を執行した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「高市トレード」に巻き戻しリスク、政策み

ワールド

南アフリカ、8月CPIは前年比+3.3% 予想外に

ビジネス

インドネシア中銀、予想外の利下げ 成長押し上げ狙い

ビジネス

アングル:エフィッシモ、ソフト99のMBOに対抗、
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中