最新記事

ワールドカップ

パブリックビューイングが命がけのイベントに

大勢の人々が集まるW杯観戦会場が爆弾テロの格好の標的に

2014年6月26日(木)15時37分
ジョシュア・キーティング

試合直前の悲劇 首都アブジャのショッピングモールで爆弾テロが発生(6月25日) Afolabi Sotunde-Reuters

 4月に270人以上の女子生徒を誘拐したナイジェリアのイスラム過激派組織ボコ・ハラムはこのところ、イラクをはじめとする他の国際ニュースの陰に隠れて一時ほどの注目を集めていない。だが彼らの残忍な行為は止むどころか、むしろ激しさを増している。

 6月25日には首都アブジャのショッピングモール付近で大きな爆発があり、少なくとも21人が死亡。犯行声明は出ていないが、ボコ・ハラムの犯行との見方が強い。
 
 爆発が起きたのは、サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の1次リーグで、ナイジェリア代表チームがアルゼンチンと対決する試合の開始1時間前。事件現場のショッピングモールでは、大型スクリーンで試合のテレビ放映が行われる予定だった(ナイジェリア代表チームはこのゲームに敗れたが、グループ2位で決勝トーナメントに駒を進めた)。

 その数日前にもボコ・ハラムは北東部ボルノ州の村を襲撃し、60人以上の少女と少なくとも30人の少年を誘拐している。ボコ・ハラムに殺害された人数は、今年に入ってすでに3000人を超えた。

 最近多発しているW杯観戦イベントを狙ったテロのヒントとなったのは、今らかちょうど4年前の事件だ。イスラム武装勢力アルシャバブがウガンダの首都カンパラのレストランなどで連続爆破テロを行い、W杯南アフリカ大会の決勝戦を観戦していた市民ら70人あまりを殺害した。

 一部の国では今や、W杯観戦は命がけのイベントとなっている。6月17日にはナイジェリア北東部ヨベ州の野外観戦場に爆発物を積んだ車両が突っ込み、W杯のブラジル対メキシコ戦を観戦していた14人が死亡する自爆テロが発生。ケニアでも先週、インド洋岸の町ムペケトニでW杯観戦中の人など約50人が射殺され、アルシャバブが犯行声明を出している。

 レバノンの首都ベイルートの検問所では今週、自爆テロ犯が爆弾を爆発させ、巻き込まれた警官が死亡した。この犯人が検問を通過していたら、200人近い人々がブラジル対カメルーン戦を観戦していた近隣のカフェがテロ現場になっていたかもしれない。

 当然のことながら、ケニアやナイジェリアの政府は国民に対し、公共の場ではなく自宅でW杯を観戦するよう警告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナ大統領と会談 トマホーク供与

ビジネス

米セントルイス連銀総裁、雇用にリスクなら今月の追加

ワールド

米ロ結ぶ「プーチン—トランプ」トンネルをベーリング

ビジネス

米中分断、世界成長に打撃へ 長期的にGDP7%減も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 9
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 10
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中