最新記事

旧ソ連

ウクライナ大統領選に迫る暗雲

東部の住民投票が終わり、次の焦点は大統領選だが、懸念材料には事欠かない

2014年5月13日(火)14時51分
ダン・ペレシュク

内戦の果てに 5月25日の大統領選での国民の選択は? David Mdzinarishvili-Reuter

 重圧に押しつぶされそうになっている政府と、東部の分離独立を宣言した武装勢力と、変革とより良い生活を長く待ち望んできた国民──3者の運命は5月25日に迫ったウクライナ大統領選で決まる。おそらくこの国の歴史で最も重要な選挙になるだろう。

 ウクライナ政府にとって、この大統領選は政権の正当性を示し、国を安定化させることができるかの試金石になる。ただし、ロシア政府が介入してくれば、その目論見もつぶれるだろう。

 2月に親ロシア派のビクトル・ヤヌコビッチ前大統領が引きずり降ろされて以来、初めて全土で実施されるこの選挙は先が予測できない状況になっている。東部の分離独立派の暴力行為や、ロシア政府による妨害が懸念されるからだ。

 このため、大統領選を行うことが賢明なのか、あるいはそもそも予定どおりに行える可能性はあるのか、という懐疑的な見方が広がっている。

 選挙が断行されれば、東部と中央政府との対立が激化し、さらには選挙の正当性に疑念を呈すという攻撃材料をロシア政府に与えかねない。一方、選挙が中止されれば、ヤヌコビッチ後のウクライナ政府は国民の信任を得ていない、ということになる。

 つまり、やってもやらなくてもバカをみる──ウクライナ政府はまさに苦境に立たされている。

東部は選挙に不参加?

 ウクライナ当局に言わせれば、選挙の準備は着々と進んでおり、自由で公正に行われるのは間違いないという。

 他方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先週、意外にもウクライナ大統領選の支持を表明した。

プーチンはまた、東部2州の分離独立派に対し、自治権の拡大を問う住民投票の延期も呼び掛けた(結局、投票は行われ、大半が自治権拡大に賛成した)。

 とはいえプーチンのこうした発言よりも先に、ロシア政府の高官たちは相次いでウクライナ大統領選を一蹴していた。そのためプーチンのウクライナ政府に対する軟化した態度が本心かどうかは疑わしい。

 さらに、ウクライナ東部は武装勢力に掌握されており、こうした地域で投票を行うのは不可能だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ

ワールド

米上院議員が戦争権限決議案、トランプ氏のイラン軍事

ビジネス

NTTドコモ、 CARTAHDにTOB 親会社の電

ビジネス

パリ航空ショー、一部イスラエル企業に閉鎖命令 イス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中