最新記事

内戦

アサド政権の兵糧攻めで餓死が激増するシリア

シリア政府の包囲作戦によって餓死する市民の数が戦闘による死者の倍に達している

2014年3月12日(水)15時34分
プリヤンカ・ボガニ

新「兵器」 地域を包囲して物流を遮断することでシリア内戦は耐久戦に(写真は包囲された中部ホムス) Thaer Al Khalidiya-Reuters

 2つのNGO団体が10日にそれぞれ発表した報告書は、シリアの内戦が一般市民に従来以上の暴力と苦痛を与えている状況を浮き彫りにしている。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、シリア政府部隊が首都ダマスカス近郊にあるヤルムーク・パレスチナ難民キャンプで、飢餓を「戦争の武器」と使用していると非難した。

「ヤルムークを絞め殺す:包囲された市民への戦争犯罪」と題された報告によれば、軍による包囲攻撃で報告された200人の死者のうち、少なくとも128人は飢餓によって死亡した。

「ヤルムークの何百という住民が、意図的に兵糧攻めにされたり、支援の手段を破壊されたり、市民への直接的または無差別な攻撃の結果で殺害されたり、負傷させられたり、または死亡している」と、報告は伝えている。

「ヤルムークでの生活は、逃れる手段もなく飢餓に直面し、負のサイクルに陥って絶望した人たちにとってますます耐え難いものになっている」と、アムネスティの中東・北アフリカ局長フィリップ・ルーサーは声明で語っている。

報告書にはこんな記述もある。

「......パンを作る小麦粉がもうなくなるとレンズ豆で代替し、次は茹でて乾燥させた小麦の塊を砕いて焼く。だがこうした代替品さえ枯渇したり、値がつり上がる。2013年末までに、米1キログラム当たりの値段は1万〜1万5000シリアポンド(70〜100米ドル)になった」

戦闘で死ぬより多い

 この報告書は「ヤルムークの包囲作戦の一環として、シリア政府は数多くの戦争犯罪を犯している」と結論付けている。

 同じ日に公表された民間援助団体セーブ・ザ・チルドレンの報告では、シリア国内の病院の60%ほどが医療のためのインフラが崩壊している現状を伝えている。

 適切なワクチン接種が行われず、はしかや髄膜炎といった病気が広がっている。最大で8万人の子供が、シリアで95年にほぼ根絶しているポリオに感染している可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中