最新記事

科学

3万年前の巨大ウイルスが人類を襲う?

シベリアの永久凍土に封印されていたウイルスが地球温暖化や開発によって息を吹き返す恐れも

2014年3月6日(木)16時22分
デービッド・トリフノフ

迫る危機 シベリアの永久凍土はすでに解けはじている Dmitry Solovyov-Reuters

 シベリアの永久凍土層の奥深くで3万年以上眠っていたウイルスの蘇生に成功した──3月3日、フランスの研究チームが米国科学アカデミー紀要(PNAS)にそんな発見を発表した。「ピソウイルス・シベリクム」と命名されたこのウイルスは非常に「巨大」で、電子顕微鏡を使わなくても光学顕微鏡で見ることができるという。

 ハリウッドのB級映画なら、この巨大ウイルスが増殖して人類を危機に陥れるところだが、その心配は杞憂のようだ。研究チームによれば、このウイルスは単細胞である特定のアメーバにしか感染せず、人体には無害らしい──少なくとも今のところは。

 不思議なのは、何万年もの間、永久凍土の下で眠っていたウイルスが、なぜ今になって大胆にも姿を現したのかということだ。その答えは、どうやら気候変動による凍土の融解あるようだ。そして冗談抜きで、こうした未知の病原体が将来、人間界に恐ろしい病気をまき散らす可能性は否定できない。

「太古の昔のウイルスが蘇生したのだから、地球温暖化や北極圏の開発によって永久凍土が解ける事態になれば、将来的に人類や動物の健康にとって脅威となるかもしれない」と、研究チームを率いた仏エクス・マルセイユ大学のジャンミシェル・クラベリは指摘する。

 発見されたウイルスが通常のウイルスと多くの点で異なることも、このニュースが世界的な注目を集める一因だ。通常のインフルエンザウイルスは13個の遺伝子をもち、直径は約100ナノメートル。一方、クラベリらが最近相次いで発見している巨大ウイルスは数100個の遺伝子をもち、大きさもインフルエンザウイルスの1000倍ほどだという。

 今すぐ、こうしたウイルスが目覚めて人類に襲いかかる恐れがあるわけではない。だがクラベリは、今回の発見が人類などへの脅威となる重大な発見の予兆かもしれないと警告している。乱開発によって永久凍土が解けはじめれば、その奥に閉じ込められていた天然痘のような恐ろしい病気が蘇る可能性もあるというのだ。

「天然痘ウイルスは地球上から根絶されたわけではなく、地表から消えただけだったのかもしれない」と、クラベリはBBCに語っている。「今後、天然痘が再び現代人に襲いかかる可能性が浮上してきた」

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中