最新記事

援助

シリア化学兵器廃棄で日本が活躍?

自衛隊の化学兵器のスペシャリストを派遣すれば日本も見直される

2013年10月8日(火)15時30分
ザカリー・ケック

人的貢献を 化学兵器が使われた疑いのあるシリアの町を調査する国連の専門家 Bassam Khabieh-Reuters

 日本の安倍政権は、シリアのアサド大統領が保有する化学兵器の廃棄に協力するため、自衛隊派遣を検討していると伝えられている。

 安倍は先週、ニューヨークで国連の潘基文(バン・キムン)事務総長と会談し、シリアの化学兵器廃棄に協力することをあらためて約束した。翌日には国連総会で演説し、対シリア難民対策として6000万ドルの追加支援を表明。これで日本の対シリア人道支援は、総額1億5500万ドルとなる。

 化学兵器について、日本は浅からぬ関係がある。95年にはオウム真理教による地下鉄サリン事件が起き、多くの死傷者が出た。その経験からも、97年に発効した化学兵器禁止条約(CWC)では批准を積極的に訴えてきた。化学兵器禁止機関(OPCW)の査察局には既に10年以上前から自衛官を派遣しているし、第二次大戦後に旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の処理も進めている。

 しかも日本は欧米諸国と違い、中東に植民地を持った歴史がない。OPCW代表団に日本人が加われば、欧米の要求に屈したとみられたくないアサド政権にとっても好都合だろう。

 日本のOPCW参加は、国際社会での地位を高め、自衛隊の正当性を高めたい安倍政権の戦略に合致するという見方もある。「(自衛隊の)こうした活動は、日本で進む『軍事の正常化』と過去の軍国主義を区別する役割を果たす」と、アメリカの民間情報会社ストラフォーは指摘する。「特にアジア太平洋地域への配慮としては有益だ」

[2013年10月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 9
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中