最新記事

ウィキリークス

アサンジ亡命を認めたエクアドルの魂胆

ウィキリークス創設者の「表現の自由と人権」を守るため名乗りを上げたエクアドルの真の狙いとは

2012年8月20日(月)17時00分
シメオン・テゲル

戦いの行方 ロンドンのエクアドル大使館前に掲げられたアサンジ解放を求めるポスター(8月14日) Ki Price-Reuters

 アメリカ政府の機密文書などを公表してきた内部告発サイト「ウィキリークス」の
創設者ジュリアン・アサンジの亡命を認めると発表したエクアドル政府の公式声明は、ある意味でおもしろい読み物になっている。アサンジはスウェーデンでの性犯罪容疑で国際指名手配され、昨年10月にイギリスで逮捕された。スウェーデンからは身柄引き渡し要求が出ているが、スウェーデンへ移送されればその後アメリカへ送還される可能性があることから、アサンジは保釈中の今年6月にロンドンのエクアドル大使館へ逃げ込み、政治亡命を申請していた。

 エクアドル政府はこのほど発表した3788語にわたる公式声明にて、アサンジがアメリカ政府による「政治的迫害」に直面しており、死刑になる可能性もあるとしている。さらに、キューバのグアンタナモ米軍基地で国際テロ組織アルカイダのメンバーとされる容疑者たちが法的に「グレー」な状態に置かれていることを引き合いに出し、アサンジがアメリカに引き渡されれば人権侵害を受けかねないと主張する。

「もしアメリカへの送還が現実になれば、アサンジ氏は公正な裁判を受けられず、終身刑か死刑を言い渡されるだろう」と、この公式声明には記されている。

 しかし、エクアドルのラファエル・コレア大統領の批判派は、この主張に偽善のにおいをかぎとるだろう。人権擁護団体はこれまで、コレア政権が国内メディアによる政権批判を抑圧していると非難してきた。彼らに言わせれば、報道の自由においてエクアドルは南北アメリカ諸国でキューバに次いで劣悪な状態にあるという。

 そのエクアドル政府がアサンジの「表現の自由、報道の自由と人権のための戦い」を称えるとは、彼らにとってはとんだお笑い草だろう。

報道の自由の擁護者に変身

「政権批判を行った日刊紙『エル・ウニベルソ』の論説者エミリオ・パラシオを亡命に追い込み、報道の自由のために活動するジャーナリストグループ『ファンダメディオス』代表のシーザー・リコルテのことを国営メディアを使って中傷する――そんな政権がアサンジの亡命を認めるとは、何とも皮肉なことだ」と、ニューヨークに本部を置くジャーナリスト保護委員会のカルロス・ローリア代表はブログで訴えた。

 皮肉な点は他にもある。エクアドル政府は公式声明の中で、複数の法的前例や、世界人権宣言など16の条約・協定を並べたて、自国はそれらに基づいて「国際的な責務」を果たす必要があると主張している。

 その中には、1948年の米州人権宣言と1969年の米州人権条約も含まれている。この2つは南北アメリカにおける人権擁護活動の柱とも言えるものだが、実のところコレアはこれらをアメリカの「帝国主義」の象徴として、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領らとともに猛攻撃してきた。

 声明に込められたコレアの真の狙いは何なのか。時代遅れの法律を用いて政権批判を封じていると外国メディアに叩かれてきたコレアが、名誉挽回を目論んでいるとの見方もある。ファンダメディオスの代表リコルテによれば、「コレアはこの一件で、われこそが報道の自由の擁護者だと名乗りをあげるつもりだ」。

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米住宅業者の景況感、低迷続く 3月わずかに改善

ワールド

ホルムズ海峡船舶護衛、欧州の多くで慎重論 「われわ

ワールド

トランプ氏訪中、延期の公算 「イラン作戦の成功優先

ワールド

ワイルズ米首席補佐官が乳がんと診断、職務継続へ ト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 5
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中