最新記事

健康

カナダでも始まった巨額たばこ訴訟の嵐

健康被害による医療費の負担を求め、たばこ会社10社に対し4兆円の支払いを求める訴訟を起こしたケベック州政府は「氷山の一角」だ

2012年6月11日(月)12時55分
エイミー・シルバースタイン

悪者は誰だ カナダでは市民の健康を害したという理由で、5つの州がたばこ大手を訴えている(オンタリオ州トロント) Mark Blinch-Reuters

 たばこによる健康被害で膨らんだ医療費を負担せよ――カナダのケベック州は先週、たばこ会社10社を相手取って、医療費などの支払いを求める訴訟を起こした。現地の関連企業のほか、国外の親会社など10社が対象。中には日本たばこ産業(JT)の関連会社も含まれる。

 支払い請求額は600億カナダドル(約4兆6000億円)。1970年から2030年までに見込まれる被害額をもとに算出したという。「たばこ会社は、たばこの有害性を承知していた。今回の訴訟ではケベック州にかなりの勝算がある」と、同州のイブ・ボルダック保健相は会見で語った。

 ケベック州最大の都市モントリオールでも現在、200万人の市民が訴えを起こし、同様の訴訟が行われている。たばこ会社は喫煙のリスクを隠そうと企み、誤った情報を広め、「ケベック州民の生存権や安全と健康」を故意に犯した、と原告側は主張している。

アメリカでは25兆円で和解した例も

 たばこ大手は、こうした動きは地方政府による単なる「カネ目当て」の方策だと批判した。ブリティッシュ・アメリカン・タバコの現地法人であるインペリアル・タバコ・カナダ社の法務担当副社長ドナルド・マッカーティーは、ケベック州政府は「何十年もの間、たばこ産業と親密な関係にあったことを棚に上げ、政治的な人気取りに走っている」と非難した。

 カナダでは、他の州でも似たような動きが高まっている。既にブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、ニューブランズウィック州、ニューファンドランド・ラブラドール州が、たばこ大手を相手取って訴訟を起こしている。

 その中でも、ケベック州の請求金額は最大規模。もっともアメリカでは98年、たばこ大手4社が25年にわたって46州に総額2060億ドル(約25兆円)を支払うことで和解した、という桁違いな例もあるが。


From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中