最新記事

アジア

東シナ海に浮かぶ中韓の大きな火種

2012年5月18日(金)14時51分
スティーブン・ボロビエツ(ジャーナリスト)

交渉の余地は残るけれど

 こうした状況の下では当然のことだが、中韓の艦船が衝突する事件も起きている。昨年12月には、韓国西方の黄海で不法操業していた中国漁船を取り締まっていた韓国の海洋警察官が、中国人船長に刺殺されるという事件が発生した。
 
 中国漁船との小競り合いはほかにも起きているが、これほど血なまぐさい事態に発展したのはこの事件だけだ。それ以来、韓国にとって黄海をカバーする海洋警察と海軍の艦艇の数を増やすことが課題となっている。

 韓国にとって中国は重要な貿易相手国であり、両国はこれから数カ月の間に自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を開始するとみられている。だが、中国で拘束されている脱北者の処遇をめぐって両国の間では外交摩擦が起きている。韓国が脱北者問題を人道問題として扱うよう求めているのに対し、中国は彼らを北朝鮮からの経済難民として捉え、本国に送還しようとしているのだ。

 それでも平和的解決の可能性は残っている。3月12日の記者会見で中国外務省の劉為民(リウ・ウエイミン)報道官は、どちらがソコトラ岩の管轄権を持つかを決めるには両国間の交渉が必要になるだろうと述べた。

 しかし、韓国大統領府の高官は次のように語っている。「離於島はもともとわが国の管轄下にあるという事実に基づき、これをことさら大きな問題にするつもりはない」。これは日本と領有権を争っている竹島(韓国名「独島」)への対応と軌を一にする。「当然、韓国のものなのだから話し合いなど必要ない」というスタンスだ。

 中国も韓国も、共に強硬で野心的な国だ。ただでさえ緊張をはらんでいる東シナ海だが、ソコトラ岩をめぐり、今後さらなる両国間の衝突が起きる可能性は否定できない。

From the-diplomat.com

[2012年4月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

オープンAI、公益法人化でマイクロソフトと合意 評

ビジネス

米ADP、民間雇用報告の週次速報を開始 政府統計停

ビジネス

米CB消費者信頼感、10月は94.6に低下 雇用不

ワールド

米軍、太平洋側で「麻薬船」攻撃 14人殺害=国防長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持と認知症リスク低下の可能性、英研究
  • 4
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 7
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中