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イスラエル「アメリカ人とデート禁止」の恩知らず

在米同胞の帰国を促したいイスラエルは、アメリカ人と恋に落ちるイスラエル人を見ていられなくなった

2011年12月2日(金)16時30分
サマンサ・スタインバーン

ユダヤの地 イスラエル国家への忠誠を誓う(独立記念日) Baz Ratner-Reuters

 イスラエルの移民統合省がアメリカ人、そして在米イスラエル人の気分を害するような広告キャンペーンを開始した。

 キャンペーンの目的は、アメリカに暮らすイスラエル人、約200万人をイスラエルに帰国させること。街中のビルボード広告やテレビCMで、在米イスラエル人に警告する。アメリカ人と交際したり結婚すれば、ユダヤ人としてのアイデンティティーを失うだろう。

 ビルボード広告はボストン、ロサンゼルス、ニューヨーク、フロリダなど全米に掲げられ、ヘブライ語でこんなメーッセージが書かれている──「アバ」(ヘブライ語で父親)が「ダディー」になってしまう前に、イスラエルに戻ってきなさい。

 移民統合省のウェブサイトには、アメリカ人と付き合ったりアメリカで子供を育てることによる「危険」を示唆する動画がいくつも掲載されている。

 例えば、物憂げな表情を浮かべるイスラエル人の彼女が映し出される動画。この日は「イスラエルの戦没者記念日」なのだが、アメリカ人のボーイフレンドには、彼女がなぜ悲しげなのか見当もつかない。そこにヘブライ語でナレーションが入る。「彼らはいつまでもイスラエル人であり続ける。だがパートナーたちがそれを理解してくれるとは限らない。だから彼らをイスラエルに呼び戻しましょう」

 また違う動画では、アメリカで育った子供がユダヤ教の祝祭日「ハヌカ」とキリスト教のクリスマスを混同している様子を描く。

 米アトランティック誌のジェフリー・ゴールドバーグ記者に言わせれば、これは恩知らずな言い分だ。イスラエルは次のように言っているに等しい。「親愛なるユダヤ系アメリカ人たちよ、米政府からイスラエルへの武器供与のためにせっせとロビー活動に励んでくれてありがとう! でも頼むから、われわれの息子や娘たちには近寄らないでくれ」

GlobalPost.com特約

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