最新記事

ロシア

プーチン、「ソ連復活」の野望と本気度

旧ソ連圏を単一政治経済圏として再統合する超大国構想が、親欧ウクライナの参加で現実味を帯びはじめた

2011年11月30日(水)14時56分
フレッド・ウィア

西欧の危機に乗じて 来年ロシア大統領に返り咲いたら次の狙いは「ユーラシア大統領」? RIA Novosti-Reuters

 プーチン首相の新構想が物議を醸している。旧ソ連圏を単一経済圏「ユーラシア連合」として再統合し、政治的にも超大国勢力を目指そうというのだ。

 プーチンは「東のEU」と称するが、ロシア帝国主義の野望が名前を変えて復活しているという批判もある。いずれにせよ、構想が実現へ向け、急速に前進していることは確かだ。

 先月中旬にプーチンは、独立国家共同体(CIS)のうち8カ国が自由貿易圏の条約に署名したと発表。これを第一歩として、「2015年頃からユーラシア連合の創設が実現に向けて動きだすだろう」と語った。

 注目は、ウクライナが条約に署名したことだ。最近まで西側の一員になろうと模索していたウクライナがロシア圏に回帰したことは、まさに時代を象徴している。緊迫した財政危機に直面するヨーロッパに対し、豊富な天然資源を武器に繁栄するロシアは、数十年来で最強の指導者の下で安定期に入っている。

 プーチンは先月、イズベスチヤ紙に寄稿し、ユーラシア連合はロシア、ベラルーシ、カザフスタンの関税同盟(来年1月に単一経済圏に移行)を中心に形成されると明らかにした。

 プーチンはあくまでソビエト連邦の復活ではないと強調。「現代の世界で1つの極になると同時に、ヨーロッパと活力に満ちたアジア太平洋地域の懸け橋になるような、強力な超国家連合を目指す」と記している。

 市場主導型の民主主義国が集まるEUと違って、ユーラシア連合は必然的に、超大国ロシアを中心とした権威主義的・中央集権的組織になるだろう。

「ヨーロッパを見れば分かるように、強力な政治的・地政学的価値観の中核がない連合は、危機に直面したら完全に崩壊しかねない」と、ロシア政府に強い影響力を持つとされる極右政治家のアレクサンドル・ドゥーギン会長は言う。

 改革派の旗手ボリス・ネムツォフ元第1副首相は、ユーラシア連合の発想自体が「政治的ジョークだ」と嘲笑する。「自由な意思に基づく連合体では、民主主義が不可欠のはずだ。独裁体制にそれができるのか」

「ソ連の再興は西側にとっては恐怖だが、旧ソ連圏では強い支持がある」と、ドゥーギンは言う。旧ソ連圏の世論調査も、大多数の人が超大国の庇護下にいる威信と安心を今も懐かしんでいることを示している。

GlobalPost.com特約

[2011年11月 9日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米特使がロに助言、和平案巡るトランプ氏対応で 通話

ビジネス

S&P500、来年末7500到達へ AI主導で成長

ビジネス

英、25年度国債発行額引き上げ 過去2番目の規模に

ビジネス

米耐久財受注 9月は0.5%増 コア資本財も大幅な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中