最新記事

世界平和

今年ノーベル平和賞にふさわしいのは?

「アラブの春」の活動家から「世界平和の番人」EUまで、史上最多の候補の中で注目されるノーベル委員会の判断

2011年10月7日(金)15時18分
ジョーダン・ヘルトン

起爆地点 エジプトの民主化を引っ張ったグーグルの元社員ワエル・ゴニム(左中央) Dylan Martinez-Reuters

 今日予定されているノーベル平和賞受賞者の発表を前に、世界ではさまざまな推測が飛び交っている。

 今年は史上最多の241候補が推薦されたが、その中でも有力候補は絞り込まれている。最有力は中東・北アフリカに「アラブの春」を巻き起こした活動家たちとされているが、ロシアの人権活動家スヴェトラーナ・ガヌシュキナやEU(欧州連合)も受賞の可能性があるとみられている。

「アラブの春」の皮切りとなったエジプトで有力候補に挙がっているのは、グーグルの元社員ワエル・ゴニム。民主化運動を促し、改革を訴えるモハメド・エルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長のファンページを立ち上げた人物だ。同サイトは民主化を求める市民が集う場となり、デモが拡大した際にも情報の収集や発信の手段として活用された。

 エジプトではもう一人、民主化組織「4月6日運動」をフェースブック上に創設したイスラア・アブデルファタも有力視されている。

 中東・北アフリカでは他にも、チュニジアのベンアリ前政権を批判し民主化運動を啓蒙したブロガーのリナ・ベン・メンニや、ヨルダンの故タラール1世の孫で宗教間の理解を深める活動に長年取り組む哲学者ガジ・ビン・ムハンマドの名前も挙がっている。

 一方、ロシアの人権擁護団体メモリアルとその幹部メンバーのスヴェトラーナ・ガヌシュキナも注目されている。ブルームバーグによれば、メモリアルはかつてソ連圏で起きた弾圧の歴史を調査し、その結果を発表することに力を入れている。

 団体や組織の中では、EUも候補に挙がっている。AP通信によれば、平和をもたらす組織として評価されつつあるという。

 いったい誰が選ばれるか、世界はそれにどう反応するかは発表を見てのお楽しみだが、過去2年の受賞者は波乱を巻き起こした。09年のバラク・オバマ米大統領は就任してまだ間もないのに受賞は尚早だとの批判された。10年には中国の民主活動家、劉暁波が選ばれ、中国政府の猛反発を招いた。

 今年も、発表後の波紋の行方に注目が集まりそうだ。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏独英、中国の台湾周辺軍事演習に懸念表明 一方的な

ワールド

サウジ、イエメン南部の港を空爆 UAE部隊撤収を表

ワールド

ロ、ベラルーシに核搭載可能ミサイル配備 欧州全域へ

ワールド

ウクライナ、米軍駐留の可能性協議 ゼレンスキー氏「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中