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住宅地砲撃が示すシリアの末期症状

反政府勢力の拠点に対する砲撃激化で市民の犠牲が急増。なりふり構わぬ弾圧はアサド体制動揺のあかしか

2011年5月12日(木)17時53分

恨み骨髄 アサド大統領の父ハフェズ・アサド元大統領のポスターを破る市民(3月25日) Amateur Video via Reuters TV

 反体制運動が高まるシリアで、政府による弾圧が激しさを増している。一部の報道によれば、治安部隊は反政府勢力の拠点である中部ホムスと南部ダラを砲撃し、8歳の子どもを含む18人を殺害したという。

 ホムス周辺地域では先週末から戦車が配備され、街の入り口には検問所が設けられた。水や電気、通信手段も遮断されているらしい。

 人権活動家のナジャティ・タヤラがメディアに語ったところによると、「戦車による砲撃と重機関銃の爆発音でホムスが揺れている」と言う。「ホムスのバブ・アムル地域とその近隣の村では、11日の夜中に砲撃と自動小銃の銃撃が聞こえた」

 3月半ばにシリアの反政府運動の口火を切った南部ダラの周辺でも戦車による砲撃が行われ、13人が殺されたという。

それでも続く大規模デモ

 およそ10万人が暮らすこの農村地帯で武器を押収するため、シリア軍は9日から取り締まりを開始。以来、強盗や略奪が横行していると報じられている。「この作戦が住民を恐怖に陥れている。治安部隊のメンバーも強奪に加わっている」と、タヤラは語る。

 今回の取り締まりで数千人が逮捕され、数百人が殺害された。複数の人権団体の調査によれば、一般市民の犠牲者数は600〜800人に上ると見られている(外国メディアは入国を禁じられているため、この数を確認する術はない)。

 しかしこうした弾圧にも屈せず、反政府デモはシリア各地で行われていると、英BBCは報じている。ダラの北に位置するジャッセムの街では、夜間に政府軍が戦車を投入しているにもかかわらず、今も大規模デモが続いている。

 国連はこれまでもデモ参加者への武力行使の即時停止を求めてきたが、弾圧の高まりを受けて再度シリア政府に圧力をかけ始めた。潘基文(バン・キムン)事務総長も、「アサド大統領に改革と自由を尊重し、平和的なデモ隊への過剰な武力行使と大量拘束をやめるよう改めて促した」と記者団に語っている。

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