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中国政府の懐を潤すタバコ産業に黄信号

世界最大の愛煙国家を動かす「おいしい仕組み」と、国民が払わされる高いツケ

2011年3月28日(月)15時39分
ロブ・バージャー

タバコ大国 中国の喫煙人口は3億人以上で、成人男性の半数以上が喫煙している Jason Lee-Reuters

 たばこの生産量、消費量ともに世界一の国といえば中国。昨年の調査によれば、喫煙人口は3億人以上で、成人男性の半数以上が喫煙者だ。たばこは国有企業の中国煙草総公司の専売制なので、政府にとってはおいしい商売。昨年度のたばこによる税収は750億ドル相当に達したという。

 一方で、当然のことながら深刻な医療問題も招いている。世界肺財団(WLF)の推定では、中国のたばこ関連疾患の死者数は今年100万人に上る見通しで、20年にはさらに倍増する。

 政府は重要な税収源であるたばこ産業を野放しにしてきた。「キツネに鶏小屋の世話をさせるようなものだ」と、WLFのジュディス・マッケイは言う。

 だが財政面でも、たばこの弊害が指摘され始めた。中国疾患管理予防センターの報告書によると、たばこによる税収は政府歳入の約6・7%を占めるが、たばこ関連の疾病による医療コストのほうがずっと高いという。

 最近中国でたばこの健康リスクへの関心が高まるなか、同報告書の発表は絶妙なタイミングだった。具体的な対策はまだ時間がかかりそうだが、たばこが「おいしくない」となれば政府も考えを変えるかもしれない。

[2011年3月 2日号掲載]

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