最新記事

ウィキリークス

疑惑の行動連発で崇高なのは理念だけ?

2010年9月3日(金)14時24分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

 アフガニスタンでの米軍の活動計画に関する機密文書を暴露し、話題を呼んだ内部告発サイト「ウィキリークス」。彼らは崇高な理念を、ホームページでこう語る。「政治の透明性が汚職を減らし、より良い政府とより強い民主主義をもたらすと信じている」

 しかし最近起きた2つの出来事が、同サイトと創設者のジュリアン・アサンジが自らの理念に従った行動をしていないことを示した。

 第1は先週、ウィキリークスが「リーク──アメリカを『テロ輸出国』と呼ぶCIAのメモ」と題した文書を掲載したこと。衝撃的な見出しだが、実際のCIAの文書の表題は「もしもアメリカが『テロ輸出国』と見なされたら」。

 内容もアメリカのパスポートを持っていればテロリストと疑われる可能性が低いので国際テロ組織はアメリカ人を勧誘したがると、問題提起しているだけ。こうした分析は識者の間でも主張されており、ウィキリークスが仰々しく騒ぎ立てるほどの文書ではなかった。

 第2はアサンジがスウェーデンでレイプと痴漢の容疑で指名手配されたこと。指名手配はすぐに撤回されレイプ容疑の捜査も打ち切られたが、痴漢については検察は捜査を続行している。

 対するアサンジは陰謀論を振りかざすばかり。メディアの取材に「明らかな中傷キャンペーンだ」と語り、「誰の仕業か分からないが、米国防総省が汚い手を使ってわれわれへの攻撃を計画しているなんて話も聞いている」とまでぶちまけた。

 だが情報筋によれば、ウィキリークス内部では、アサンジが証拠もなしに陰謀論をまき散らしていることに懸念の声が広がっている。アサンジを説得して表舞台から退かせようとする動きまで出ているという。透明性と民主主義を全うするなら、「アサンジ追放」の筋書きもあるかもしれない。

[2010年9月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、追浜工場の生産を27年度末に終了 日産自動車

ビジネス

独ZEW景気期待指数、7月は52.7へ上昇 予想上

ワールド

米大統領、兵器提供でモスクワ攻撃可能かゼレンスキー

ビジネス

世界の投資家心理が急回復、2月以来の強気水準=Bo
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中