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地球温暖化

COP15「不参加」3国の複雑な事情

温暖化の議論に欠かせないあの国がコペンハーゲン会議に参加していないのはなぜ?

2009年12月8日(火)16時34分
ダニエル・ストーン(ワシントン支局)

地球の命運 気候変動には全世界が協力して取り組むべきだが(12月7日、コペンハーゲンで巨大な風船の下を歩く人たち、魚眼レンズで撮影) Pawel Kopczynski-Reuters

 地球温暖化は今や世界が協力して立ち向かうべき課題だ。12月7日にコペンハーゲンで始まった国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)には実に192カ国が集結する。しかし、よくよく見てみると、温暖化対策を話し合う上で重要な国がいくつか抜け落ちている。「控え選手」にまわってベンチを温めている国の顔ぶれとは......。

バチカン 世界最小の独立国バチカンは、国連に加盟していない。世界に10億人以上のカトリック信者を抱えていれば、その必要もないのかもしれない。

 気候変動問題については、バチカンは優等生だ。現法王のベネディクト16世も前法王のヨハネ・パウロ2世も環境問題を重視。排出した二酸化炭素の量を、植林などで吸収して相殺する環境保護策「カーボン・ニュートラル」を世界で初めて採用した素晴らしい国だ。

 だがCOP15に参加しても、国家の小ささゆえに問題の解決に大きな貢献はできないだろう。ただし、1つだけ例外的なケースがある。もしCOP15での議論が行き詰まりそうになったら、そこに宗教を持ち込む動きが出てくるかもしれない。

台湾 世界の大半の国は台湾を独立国家とみなしている(アメリカを含むいくつかの大国は、主に政治的な理由で承認していないけれど)。

 台湾は国連加盟国ではないので、その国益は中国に代表されることになる。だが台湾は経済発展が著しい中国よりも温室効果ガスの削減に前向きだから、両者の国益は完全には一致していない。

 それでも台湾の指導者層は、「中国」という名の下で参加するという条件付きでCOP15への参加を決めた。他国の首脳陣と顔を合わせることで台湾の存在感をアピールしたいという狙いもあるようだ。

グリーンランド 国土の大部分が北極圏に属するグリーンランドは、世界の氷河を溶かしている温室効果ガスについて何か言いたいはずだと、誰もが思うだろう。

 問題は、グリーンランドは今年6月に自治権を拡大したばかりで、まだ国連に正式加盟していないということ。氷河に覆われたグリーンランドは長年、デンマーク領だった。グリーンランドの財政と外交は今でもデンマークの管理下にある。

 デンマークはCOP15の開催国だから、会期中はもちろんグリーンランドの主張を大いに代弁するだろう。だがこれほど重大な問題についてなぜグリーンランドが除外されているのか。やはりちょっとおかしな話ではないか?

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