最新記事

公衆衛生

「金のうんち」が途上国を救う

2009年10月27日(火)12時11分
メアリー・カーマイケル(医療担当)

 下痢性疾患は途上国においてはいまだに深刻な病気だ。この問題に世間の注目を集めたいと思ったら、一体どうすべきだろう? 方法は2通りある。まず、5歳未満の子供を毎年100万人以上死に至らしめる非常に深刻な病気として取り上げる方法。もう1つは、コメディー仕立てで訴える方法だ──例えば、うんちをジョークのネタにするとか。

 10月15日、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院は啓蒙を目的に「衛生学とうんちをめぐるお笑い短編アニメ映画の夕べ」と銘打った映画祭を開催した。その名も「ゴールデンうんち賞」に輝いた作品は『トイレでダンス』。2位はそのものずばりの『うんちについての映画』だった(入賞作品はウェブサイトで視聴可能。www.thegoldenpooawards.org)。

 発想としては面白い。だが、多くの子供たちを死に追いやっている病気を──下痢による重度の脱水症状により、涙も流せない状態で亡くなっているのだ──笑いのネタにしていいものだろうか。

 事実、こうしたやり方に抵抗を感じた人もいる。だがある程度は「論争が起きたほうがありがたい」と、同大学院で衛生学センター長を務めるバレリー・カーティスは言う。カーティスは映画祭の仕掛人の1人。少しくらい過激なことをやらないと、先進国では誰も下痢の問題に目を向けようとはしないからだ。

 そもそも、このような過激な手段が必要とされるのには2つの理由がある。第1に、先進国では公衆衛生が発達していて抗生物質などの薬も容易に手に入るため、人々が途上国における下痢性疾患の恐ろしさを理解していないこと。第2に、汚い話だからという理由で、みんな下痢を(少なくとも)まじめな話題として取り上げたがらない。

 今のところ、お笑い作戦はうまくいっているようだ。カーティスによると、映画祭のチケットはあっという間に完売し、英メディアの関心も非常に高かったという。

[2009年10月28日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平協議、成果乏しく終了 「困難な交渉」

ワールド

トランプ氏、ディエゴガルシア島巡る英の対応を非難 

ワールド

北朝鮮、党大会で新たな軍事目標設定へ 金総書記が表

ビジネス

ムーディーズ、AI懸念を一蹴 通期利益見通しが予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方...勝利のカギは「精密大量攻撃」に
  • 4
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    アフガニスタンで「対中テロ」拡大...一帯一路が直面…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中