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「ナイジェリアのタリバン」は敵じゃない

イスラム過激派の暴力を見て、対テロ戦争が飛び火したと考えるのは早計だ。彼らをテロリストと混同して本当の原因を見過ごすことのほうが怖い

2009年8月5日(水)18時53分
スコット・ジョンソン(アフリカ総局長)

聖戦か内戦か 7月下旬にナイジェリア北部でイスラム過激派と治安部隊が衝突し、死者は8月2日までに700人以上にのぼった(写真は7月31日) Aminuo Abubacar-Reuters

 国際テロ組織アルカイダのナンバー2でエジプト人のアイマン・アル・ザワヒリが、欧米へのテロ攻撃の次なる前線は西アフリカのナイジェリアだと予言したのは2001年のこと。それだけに7月下旬、ナイジェリアで「ボコ・ハラム」と名乗るイスラム過激派組織が警察署や政府施設を襲撃すると、ついに予言が現実になったという恐怖が広がった(ボコ・ハラムと治安部隊の双方で700人以上が死亡)。

「西洋の教育は罪」を意味するボコ・ハラムは、「ナイジェリアのタリバン」と呼ばれている。西洋式の学校教育を禁じ、厳格なシャリア(イスラム法)を全土で施行するよう要求。ニジェールとの国境付近にある訓練キャンプの名称は「アフガニスタン」だ。

 もっとも、タリバンとの類似点はそこまで。ザワヒリの予言から8年経った今も、「西アフリカにテロの前線を」という彼の構想は実現していない。

 ナイジェリアでは、イスラム主義者が外国人をねらったテロは一件も起きていないし、キューバのグアンタナモ米海軍基地に収容されているナイジェリア人もいない。国民の間に強烈な反米感情はなく、近くに攻撃対象となる米軍もいない。

「西アフリカにはジハード(聖戦)を支える土壌がない」と、ジョンズ・ホプキンス大学ポール・ニッツ高等国際問題研究大学院のアフリカ研究ディレクター、ピーター・ルイスは言う。「今回の事件がこの地域での過激派ネットワークの形成につながることはない」

270億ドルのオイルマネーが消失

 では、今回の事件は何を意味するのか。その答えは、複雑に絡み合う醜悪な国内の政治事情にある。
 
 ナイジェリアでは、一日1.25ドル未満で生活する貧困層の割合が70%を超える。その一方で、ごく一部の裕福で腐敗した政府関係者は法外に贅沢な生活を送っている。

 ボコ・ハラムが蜂起したナイジェリア北部ほど貧富の差が激しい地域はない。大卒の若者でさえ仕事はほとんどなく、それが北部の人々が新たな政治システム、とりわけシャリア法による統治を選ぶ一因だ。

 かつては活気に満ちていた農業や繊維工業はこの10年で衰退し、ナイジェリア南部で発見された油田が政府の主要な収入源となった。北部の人々がその恩恵を受けることはなかった。

 石油で稼いだ巨額の富は公共サービスや雇用創出、開発事業に回すよう法律で定められているが、実際には政府関係者の懐に消えた。ナイジェリアの元財務大臣は07年、本誌に対して270億ドルが政府の金庫から消え失せたと認めた。
 
 人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは07年、ナイジェリアの実態は「民主的統治国家というより犯罪組織に近い」と語った。

 その状態は2年経った今も変わっていない。失業や経済停滞、汚職、腐敗した司法などの要因が相変わらずはびこっている。「広い意味ではナイジェリアという国家が破たんしつつある」と、ブリュッセルのシンクタンク、国際危機グループのリチャード・モンクリーフは言う。

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