最新記事

北朝鮮

クリントン訪朝で金正日の高笑い

2009年8月5日(水)17時39分
マイケル・ハーシュ(ワシントン支局)

金正日が待ち望んだ「承認印」

 ブッシュは手のひらを返したように北朝鮮との外交をすべて中断。金政権と交渉することで同政権に正当性を与えるつもりはないことをはっきりさせた。02年には、ブッシュは共和党上院議員たちとの私的な会話の中で金をこう呼んでいる――「夕食の席で駄々をこねる子供」のような、憎たらしい「小人」。こうしたブッシュの金に対する皮肉は、本誌などの欧米メディアで何度か報道された。

 それ以来、米朝関係は最悪の状態が続き、膠着状態に陥った。06年と07年には北朝鮮の核開発凍結合意に近づいたが、これも再び頓挫。北朝鮮が核兵器製造と使用済み核燃料について詳細な情報を提供するのを拒んだからだ。両国間の緊張は、北朝鮮による2回目の核実験と一連のミサイル発射、さらに6月にアメリカ人記者2人に12年の重労働刑が下されるなか、ここ数カ月間で頂点に達していた。

 今回のクリントン訪朝について、米政府も国務省も声明を出していない。オバマ政権は5月に行われた2回目の核実験を受け、国連の新たな制裁決議案を主導するなど断固とした態度をとってきた。病を患う金正日も、後継者である息子の権力強化を目論んでか、米政府に対する態度を硬化させてきているのは間違いない。

 それでも、クリントンの訪朝は金にとって大きな意味をもつ。10年以上も切望してきた、政権に対する承認を得たようなものだからだ。オバマ大統領が誕生し、妻ヒラリーが国務長官という米外交トップの座に就いて以来、ビル・クリントンは表舞台からすっかり姿を消していた。だがこれでやっと、自身がやり残した北朝鮮との交渉成立に向けてチャンスをつかんだようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

OPECプラス、6月日量41.1万バレル増産で合意

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 8
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 9
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 10
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中