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ナイスガイに首相が務まるか

2009年4月7日(火)16時12分
ストライカー・マグワイヤー(ロンドン支局長)、デービッド・メルリンジョーンズ

ブレアの後継者を自任

 いわゆる「影の内閣」に党の重鎮を迎えたのも、その表れだ。影の財務相のジョージ・オズボーン(37)はキャメロンと親しいが、あまりにも軽量級。そこで影の経済担当相に大ベテランのケネス・クラーク(68)を復帰させた。マーガレット・サッチャー、ジョン・メージャー両政権でも閣僚を務めた実力者である。元党首で影の外相のウィリアム・ヘイグも、「事実上の副首相」に昇格。一方で、各省庁幹部との実務的協議を始めている。

 首相の座をめざす若き政治家となれば、トニー・ブレアと比較されるのは避けられない。キャメロンもそれは承知だ。党首に就任したばかりのころは、自分こそ正統な「ブレアの後継者」だと語っていたものだ。

 しかしブレア流の中道・現実主義を受け継ぐという主張は、ここへきて逆効果になりかけている。ブレアとの共通点よりも、違いが明らかになってきたからだ。

 ブレアは43歳のとき、非常に詳細な政策を掲げて選挙に圧勝した。首相就任後は病院の待ち時間の短縮を実現したり、スコットランドなどの自治権拡大という大仕事もやってのけた。そうした取り組みで若さや将来性だけでなく、労働党の古い体質からもサッチャー流の保守主義からも脱却した新世代の指導者であることを実証し、97年の総選挙でも圧勝した。

 次の選挙で保守党が勝っても、97年ほどの変化は期待できない。党首に選ばれた05年以来、キャメロンは必ずしも労働党との対決路線を鮮明にしてきたわけではない(むしろ労働党の中道的な政策の多くには同調してきた)。実際、キャメロンにとっての最優先課題はサッチャー流の「冷酷な党」のイメージを変えることだった。

 PR業界出身のキャメロンは、言葉を操って自分自身や党のイメージをつくり替える方法に通じている。現在のところ、保守党はウェブサイトで「キャメロンの保守党」をうたってブランドの再構築をめざしている。キャメロン自身も、環境保護や社会的正義、世界的な貧困に対する責任というキーワードを繰り返している。

ライバルも認める人柄

 これまでは、こうした発言がキャメロン人気に一役買ってきた。政策論争に深入りしすぎれば個別の利害対立が表面化し、幅広い支持は得にくくなる。だから内容よりもスタイル重視。この手法は、少なくとも今日までは効果を発揮してきた。

 調査会社ポピュラスのアンドルー・クーパーによれば、キャメロン以前の保守党は32%ほどの支持率に低迷していた。労働党に大きくリードされ、自由民主党の追い上げも許していた。

 しかしキャメロンが就任してからは支持率は即座に37%に上昇し、1年半ほど前からは40%を超えることも多くなった。保守党にとっては20年ぶりの高い支持率だ。クーパーに言わせると、「有権者は保守党が変わっていないことを承知している」が、キャメロンには期待をかけてきた。

 総選挙が近づくなか、キャメロンは保守党の戦闘ムードを高めながら、一方で自らの最大の武器である「人当たりのよさ」を守るという困難な仕事に直面している。

 ライバルたちも、キャメロンの人柄は認める。労働党のアラン・ジョンソン保健相も、英サンデー・タイムズ紙で「彼はナイスガイだ」と語っている。

 たぶん、国民の多くもそう思っている。だからキャメロンの長男アイバン(6)が2月に急死したときは、悲しみと励ましの声が国中から沸き起こった。

 キャメロンはイートン校を出てオックスフォード大学に学んだエリートで金持ちだ。しかし病身の息子がいたせいで、図らずも国民皆保険制度への理解を深めることになった。

「私には病気の子がいる。だからわが国の医療制度を内側から見る機会が実に多い」。党首就任の1カ月後に、キャメロンはそう語っている。「医者を本業とする議員を除けば、私は誰よりも長い時間を病院で過ごしているだろう」

 うまい言い方だ。しかし、と労働党のジョンソン保健相は前掲の新聞で語っている。「キャメロンは今日まで、巧みに自分のイメージを党に重ね合わせてきた。しかし、もう十分だ。いったい次は何を見せてくれるのか?」

 とりあえずの「次」は、キャメロンが首相になること。そして本当に大事な「次」は、首相となった彼が何をするかだ。

[2009年3月18日号掲載]

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