最新記事

日本文化

ロンドンで今人気の日本とは? 「日本人が見せたい」から「外国人が見たい」発信へ

2018年12月25日(火)15時45分
冨久岡ナヲ(イギリス在住ジャーナリスト)

一等地にオープンした複合的な施設ジャパン・ハウス・ロンドン (Photo:Nao Fukuoka)

<イギリス・ロンドンで日本関連のふたつの施設が盛況だ。日本文化を海外に発信する活動は、従来の一方通行からより現地で消化されやすい形へと変わっているようだ>

今年、ロンドンにはふたつの大きな日本関連の商業施設がオープンした。ひとつはジャパン・ハウス・ロンドン。ハロッズなど高級百貨店がならぶショッピングエリアに近い一等地の大きなビルの中に、セレクトショップ、緑茶バー、展示とイベント用スペース、図書館、レストランを擁する複合的な施設だ。外務省が主導し民間企業が運営するというユニークな体制で、サンパウロとロサンゼルスに続きこの6月にオープンした。

扉を開いてから2ヶ月半で、なんと13万人近い来場者が訪れたという。高い人気の秘密はまず、日本人ではないディレクターを据え、現地会社にその運営を任せているところだろう。現地目線で展示テーマや販売する品物が選ばれ、説明や展示のしかたもイギリス人にアピールするスタイルとなっている。

イギリス人の視点からアピールする日本

外から見た日本の魅力というのは、日本に住む日本人が想像することとはかなり異なっていることが多い。「それは、日本の人が外国の文化を見た場合にも同じことが言えますよね。」と指摘するのはジャパン・ハウス・ロンドンのマーケティング・ディレクター、カイリー・クラーク。

たとえばイギリスの「ピーターラビット」は、日本人に圧倒的な人気がある。絵本の作者の故郷である湖水地方には大勢の観光客が押しかけ地元経済に貢献しているが、イギリス人にはどこがそんなに魅力的なのかと首をかしげる。 そして自分たちが誇る「真の湖水地方名物」、美しい丘陵風景への興味の低さにがっかりしたり、日本人にはイギリスの本当の良さが理解できないなどと憤ったりするのだ。

「ですから、ジャパン・ハウス・ロンドンは日本のいいものを並べるだけではなく、日本生まれの創造感性、発想、技術などが世界に与えるメリットを感じてもらう場でもあり、見せる側と見る側のインタラクティブなコミュニケーションを推し進めています」(クラーク)。これまでになかった方向性だ。政府の取り組み、という堅苦しい印象をまったく感じさせないブランディングも成功の秘密のひとつだろう。

Japanhouse2-720.jpg

現地目線で展示テーマや販売する品物が選ばれるジャパン・ハウス・ロンドンは連日盛況だ (Photo:Nao Fukuoka)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    話題の脂肪燃焼トレーニング「HIIT(ヒット)」は、心…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語