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ロンドンで今人気の日本とは? 「日本人が見せたい」から「外国人が見たい」発信へ

2018年12月25日(火)15時45分
冨久岡ナヲ(イギリス在住ジャーナリスト)

みそ汁の飲み方もイギリス仕様で

もうひとつは、巨大なショッピングセンター、ウェストフィールド内にできた、いちば(Ichiba)。日本食のフードホールと食料品売り場を合わせて1600平米と、日本食の店舗としては欧州最大の広さを誇る。ロンドンに食料品店や飲食店を抱えるジャパンセンター・グループとクールジャパン機構の合同事業、とこちらも日本政府がらみの商業施設なのだ。

フードホールでは、今イギリス人に人気の日本のストリートフード...たこやきやラーメンなどが実演販売されている。ランチタイムでなくても行列ができるほどの盛況が続いている。イギリス人がみそ汁を前菜のスープとしてご飯やおかずとは別に飲んでいる姿は、日本人には違和感があるが、視点を変えれば日本の食文化が「イギリス仕様」となって浸透したと取ることもできる。

そして、客は食事をしたついでに生しょうゆや酒粕など、イギリスでもここでしかお目にかかれないような食材を手に取り、興味深そうに眺めている。

ジャパンセンター・グループの創設者でいちばを代表する徳峰国蔵は、在英40年を超えるベテラン事業家だが、食に関心が薄く保守的な味覚を持っていたイギリス人が、世界の料理を進んで食べるようになるまでの移り変わりを現場でつぶさに見てきた。イギリス人に好まれる味を通して彼らのハートを捉え、そこでさらに本物の日本食への関心を誘うやり方にその見識が生かされていると感じた。

日本文化を海外に伝える活動はこれまでも実は長い間行われてきた。伝統芸能や和食からおもてなしの精神にいたるまで、誇るべき日本文化はほとんど発信されている。

ただ、日本人が考える正しい日本の姿をそのまま海外で受け入れてもらおうという努力は、いわば一方通行な発信であり、受け手の文化の中に入ってどう消化されているか、それはなぜなのかというところまで踏み込んでこなかったのかもしれない。

このふたつの事業のように、海外への日本発信活動は変わりつつある。「日本人が見てほしい・知ってほしい日本」を訴えるには、まず先に「外国人が見たい・知りたい日本」を理解することから始まるのではないだろうか。

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