最新記事

対テロ戦争

水責めだけじゃないCIAの拷問法

米上院委員会の報告で明らかになった、テロ容疑者への残酷きわまりない尋問の一部始終

2014年12月11日(木)16時49分
テイラー・ウォーフォード

地獄 Reuters

 バラク・オバマ米大統領が「拷問」と呼んだCIA(中央情報局)の「強化尋問テクニック」。米上院情報委員会が9日に発表した報告書の要旨で、その残酷きわまりない実態が明らかになった。
 
 CIAはすでにテロ容疑者にこうした尋問を行っていたことを認め、テロに関する「唯一無二の、その他の方法では入手不可能な」情報を得るためには有用なテクニックだと主張してきた。しかし報告書を見ると、こうした手法が有効だった事例はほとんどなく、CIAは関係当局に事実を隠蔽するような報告を行っていた疑いがある。

 CIAが用いた残酷なテクニックの代表格が水責めだ。傾斜した板に足を上にして容疑者を固定し、鼻と口に水を注ぎ続けて溺死寸前の状態に追い込む。CIA内部ではイニシャルのKSMで通っていたアルカイダの大物幹部ハリド・シェイク・モハメドには、水責めによる尋問が15セッション行われた(1回のセッションで繰り返し水責めに遭わされる)。

 睡眠を奪うこともCIAの常套手段だ。テロ容疑者は「最高180時間、通常は立ったままか、苦痛を伴う姿勢で、ときには両手を縛って頭上に上げさせたまま」一睡もできなかったと、報告書は述べている。「長期間睡眠を奪われた被収容者のうち、少なくとも5人が幻覚に苦しむようになったが、そのうち少なくとも2人に対して、この処置が続行された」

 CIAの内部文書から、長時間苦痛を与え続ける手段として、無理な姿勢をとらせる拷問が日常的に行われていたことが分かる。KSMに対する「最初の水責めセッションは30分間行われ、それに続いて体を横にした無理な姿勢をとらせたが、このやり方はCIA本部が事前に許可していなかったものだ」と、報告書は指摘している。「(グアンタナモ米軍)基地の責任者は法的に問題になるのを恐れて、医療スタッフにこの尋問について(上層部に)報告しないよう命じた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国とスイスが通商合意、関税率15%に引き下げ 詳

ワールド

米軍麻薬作戦、容疑者殺害に支持29%・反対51% 

ワールド

ロシアが無人機とミサイルでキーウ攻撃、8人死亡 エ

ビジネス

英財務相、26日に所得税率引き上げ示さず 財政見通
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗り越えられる
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 7
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中