最新記事

アメリカ政治

オバマケア憎しで米政府閉鎖

ついに政府閉鎖を招いた民主・共和両党の醜い争いの舞台裏

2013年10月1日(火)17時08分
サラ・ウルフ

時間の浪費 党派対立は株価下落など経済的な悪影響をもたらしている Kevin Lamarque-Reuters

 アメリカ連邦議会では先週から今週にかけ、2014会計年度(13年10月〜14年9月)の暫定予算案をめぐる議論と非難の応酬が続いていた。だが30日までに与野党の溝が埋まることはなく、10月1日に政府機関が一部閉鎖される事態となってしまった。

 議論の争点は、バラク・オバマ大統領が進めてきた医療保険改革(オバマケア)だ。29日にはオバマケアの1年延期を盛り込んだ予算案を共和党が多数を占める下院が可決したが、民主党が多数を占める上院はこれを否決。共和党議員で下院議長のジョン・ベイナーは「あっけにとられるほど傲慢」と非難した。

 争いはそれ以前から繰り返されていた。下院がオバマケア関連予算を除外した予算案を可決すれば、上院は27日にこれを否決してオバマケア予算を復活させる予算案を可決。29日に下院を通過したオバマケアの1年延期という予算案について上院は、最初から拒否する姿勢を明らかにしていた。

 結局は「どちらが先に折れるか」という問題だったのだが、政府閉鎖というタイムリミットまでに民主党と共和党が歩み寄ることはなかった。

 民主党からすれば、30日にオバマケアを復活させる予算案を上院が再び可決した時点で、1996年以来初めての政府閉鎖という事態を招くか、妥協するかの選択を、下院の共和党側に委ねた形だった。一方の共和党は政府閉鎖になっても、責任は自分たちではなく、民主党側にあると主張した。

「政府閉鎖になったとしても、責任は(民主党の)ハリー・リード上院院内総務の絶対主義的な姿勢にあり、それはアメリカ国民を人質にとるような行為だ」と、共和党の反オバマケアの急先鋒、テッド・クルーズ上院議員はインタビューで語った。リードは「譲歩するつもりも、議論をするつもりもない。オバマケアへの予算は何があっても100%確保するつもりで、政府閉鎖もやむなしという考えだ」。

 クルーズは上院で先週開かれていた集中審議の中で、合計21時間にもわたってオバマケアを中傷し続け、その内容は世界中で報じられた。だが29日の時点では、クルーズもほかの共和党議員たちも、政府閉鎖を招くまで妨害的な行動を続けるつもりかどうかは明言しなかった。

 実は現在の与野党の対立は、さらに重大な争いの前触れでしかない。オバマ政権は、16兆7000億ドルという現在の連邦政府債務の上限額を引き上げる考えだが、これにも共和党は反対している。

 10月半ばまでにこの問題が解決しなければ、アメリカ政府が不渡りを出す事態を引き起こす可能性がある。それによってもたらされる米経済の機能不全と世界経済への衝撃は、今回の政府閉鎖をはるかに上回るものとなるだろう。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中