最新記事

SNS

プライバシーは死んでいる

文章力抜群でセックスも奔放?──ガセも含めた「ダダ漏れ」個人情報であなたが評価される日

2011年1月18日(火)15時12分
ジェシカ・ベネット

 あなたが企業の採用担当者で、私が応募者だとしよう。インターネットで個人情報を収集する業者に、あなたが私についての調査を依頼する。すると、こんなことが分かる──。

 ジェシカ・ローズ・ベネット、29歳。週に30時間、勤務時間中にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にアクセスしている。大酒飲みで、ドラッグ使用者。セックスの面ではかなり奔放。文章力は抜群で、給料は格安で済む。

 正しい情報は一部だけだ。上質なバーボンは好きだが、ドラッグなんて使っていない。この情報は、取材でカリフォルニアのマリフアナ栽培場を訪れたことが原因で入り込んだガセだ。

 セックスに奔放? 事実ではないと、私の5年来のボーイフレンドが証言してくれるはずだ。ただ、ポリアモリー(複数の相手と同時に交際すること)について記事を書いたことはある。

 SNSに長時間アクセスしているのは確かだが、それは記者の仕事の一部。それに、給料も格安で済むわけではない。

 ぞっとする話ではないか? しかしこの種の個人情報は、正確な情報も不正確な情報もひっくるめて、いとも簡単に手に入る。わずかな手掛かりさえあれば、ある程度の時間をかけるだけでかなりの量の個人情報をネット上で集めることができる。

 今回の実験では、個人情報保護サービスを提供しているレピュテーションディフェンダー社に依頼し、ネット上で私の個人情報を集めてもらった。その際にこちらから知らせた情報は、私の名前(アメリカ人としてはごくありふれたものだ)と電子メールアドレスだけだ。

「ネットの匿名性」は幻想

 この情報を基に、数十年の経験を持つエンジニア3人が調査を開始。調べたのは、SNSサイトのフェースブックやリンクドインなどの公開データベース。違法なハッキングはまったく行っていない。

 驚くなかれ、始めて30分もたたないうちに、私の社会保障番号が割り出された。2時間後には住所、体形、出身地、健康状態も分かってしまった(レピュテーションディフェンダーは、この種の調査を業務として行っているわけではない。今回は本誌の依頼で、あくまでも実験として特別に実施した)。

 ひとごとだと思わないほうがいい。クレジットカード会社など大量の個人情報を蓄えている企業は、実際にこの種の情報をただ同然で企業の広告部門などに売っている。フェースブックで一部のアプリケーションを利用すると、個人情報が第三者の手に渡ってしまうことも、先日のウォールストリート・ジャーナル紙で報じられた(フェースブックは、ユーザーの個人情報の露出を「大幅に制限」すると発表した)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米サイバーマンデー売上高、6.3%増の見通し AI

ビジネス

BofA、FRBの12月利下げを予想 据え置き見通

ビジネス

米、英の医薬品関税をゼロに NHS支出増と新薬価格

ワールド

ゼレンスキー氏、マクロン氏とパリで会談 「持続可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カ…
  • 5
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中