最新記事

住宅市場

差し押さえ不正という新しい危機

2010年10月26日(火)18時19分
ジョエル・ショクトマン

どんどん競売にかけて市場に戻せ

 オバマ政権と多くのエコノミストも、全米で差し押さえを凍結することには反対だ。そんなことをすれば、住宅市場はさらに予測不可能になり、市況の回復も遅れるという。「全米の住宅購入者を宙ぶらりんの状態に置くことになる」と、HUD(住宅土地開発省)のショーン・ドノバン長官は言う。差し押さえ多発地域では、売り家の半分が差し押さえ物件。もし差し押さえが凍結されれば、これらの物件の競売がすべて中止されることになる。調査の結果、HUDは深刻な問題も発見したが、是正措置を取っているとドノバンは言う。

 差し押さえがすべて終わるまで、住宅市場の治癒は始まらないと、保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所のエコノミスト、ピーター・ワリソンは言う。「差し押さえ、その家を市場に戻すことを先送りすればするほど、住宅市場の回復も先送りになる」と、彼は本誌に語った。

 モラトリアムの有無にかかわらず、銀行はすでにアメリカの住宅市場で巨大なシェアをもっている。金融機関が所有する差し押さえ物件は推定で90万件に上ると、リアルティトラックは言う。売りに出されているのはその3分の1だけだ。

 もし銀行が新たな差し押さえを一時停止し、自分たちが保有する物件だけを今のペース売り続けたとしても、すべて売り切るまでには1年半近くかかる。ということは、アメリカの住宅地であと何年も空き家が増え続けるのはいずれ避けられないということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンドのレバレッジ、5年ぶり高水準=ゴール

ビジネス

英PMI、6月は予想以上に改善 雇用削減と地政学リ

ビジネス

アングル:三菱重工、伝統企業が「グロース」化 防衛

ワールド

アングル:イラン核開発、米軍爆撃でも知識は破壊でき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中