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オバマ政権「機密流出」反論の納得度

2010年7月29日(木)17時35分
ウィリアム・サレタン

 ジョーンズもギブスも、オバマ政権下でアフガニスタンへの戦費や人員の投入が増えたことに触れている。だがそれで、アフガニスタンの縁故主義やパキスタンの隠された動機をどうこうできるわけではない。

 ギブスはまた、オバマが09年3月にパキスタンに対し「アルカイダ掃討への決意を示さなければならない」との警告を行なったことにも触れている。ところで最後の漏洩文書の日付はそれから9カ月後だ。オバマの3月の発言で問題を解決に導くことができなかったとすれば、12月の演説に効果があったとする根拠は何なのか。

■「9・11の二の舞は許されない」

 問題の深刻さをごまかそうとしている部分を別にすると、オバマ政権高官たちの発言は当を得ていると言っていい。

 例えばジョーンズ補佐官の声明で一番いい部分は「われわれは深刻な試練が待ち構えていることを知っている。だがアフガニスタン情勢が後退することを許せば、アルカイダのような過激派が陰謀を企て訓練を行なう余地を増やすことになり、われわれはその暴力行為の脅威に再び直面することになる」というくだりだ。

 ギブス報道官も記者会見で「もしアメリカがこの地域に展開せず(中略)、アルカイダや過激なその仲間たちが堂々と第2の9・11の陰謀を企てるような事態になっていたら、わが国は今よりもはるかに危険で大きな標的となっていただろう」と述べている。

 軍事作戦がうまく行かない以上撤退すべきだと考える人は、アフガニスタンで米軍が戦っている相手(タリバン、ひいてはアルカイダ)がこの国を治めていた時に何が起きたか忘れているに違いない。アルカイダはアメリカ本土に乗り込み、アメリカ人を殺したのだ。

 勝ち目があるからではなく、戦争がわれわれの行く手に立ちはだかっているがゆえに戦い続けなければならないこともある。アフガニスタンの場合、ベトナムやイラクと違って脅威は仮説ではなく現実だ。

 ウィキリークスによれば、機密文書を公表したのは人々に情報を提供するためだという。それ自体は結構なことだ。

 だが目の前にある情報に限ってうっかり見逃してしまいがちなものだ。アフガニスタン紛争に関連して起きた最悪の事件は、9年前に3000人ものアメリカ人が命を落とした9・11テロに他ならない。このことを忘れてはならない。

Slate.com特約)

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