最新記事
SNS

イーロン・マスクがぶっ壊したツイッター...「公共広場」を焼け野原にした迷走の全て

FREEING THE BIRD

2025年11月17日(月)17時30分
ジェイコブ・シルバーマン(ジャーナリスト)
マスクがXへの改名を決定した直後、サンフランシスコの本社ビルから撤去されるツイッターの看板(23年7月) JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

マスクがXへの改名を決定した直後、サンフランシスコの本社ビルから撤去されるツイッターの看板(23年7月) JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

<デジタル公共広場を作る公約は口先だけ──巨額のSNS買収劇と大富豪の迷走に迫る>


▼目次
自分の投稿の反応に執着
根拠薄弱な噂をすぐに拡散
「言論の自由」という虚構

イーロン・マスクは2022年、現在「X」の名で知られるSNSのツイッターを買収した。その目的についてマスクは、「幅広い信念を健全な方法で議論できるデジタルな公共広場」を作ることだと語っていた。ところが買収後にはコンテンツ管理基準を緩和し、ドナルド・トランプ米大統領のものをはじめ、停止されていた多くのアカウントを復活させた。

ジャーナリストのジェイコブ・シルバーマンの新著『金ぴかの怒り──イーロン・マスクとシリコンバレーの過激化(Gilded Rage: Elon Musk and the Radicalization of Silicon Valley)』は、総額440億ドル(当時のレートで約6兆4000億円)に上ったツイッターの買収劇と、マスクがこのプラットフォームにもたらした変化を追っている。

シルバーマンは、マスクがトランプの右腕となる前から右派寄りの姿勢を示す兆しがあったことを明らかにし、彼をシリコンバレーの政治的過激化の文脈に位置付ける。そして、イノベーションの中心地を政治装置へと変えつつあるテック界のネットワークをあぶり出す。

@newsweek

Journalist and author Jacob Silverman pinpoints the beginning of the end for Elon Musk and Donald Trump. "Musk is someone who doesn't like not being picked," Silverman told Newsweek in conversation over his new book "Gilded Rage: Elon Musk and the Radicalization of Silicon Valley."

♬ original sound - Newsweek

シルバーマンの新著の核心部分を、本誌独占の抜粋で紹介する。

◇ ◇ ◇


イーロン・マスクのツイッター買収は衝動的な行動に見えた。大富豪がまた1つ、おもちゃのコレクションを増やすかのよう──自分にはそれが可能なのだと誇示するために。

だが同時にこの買収は、影響力はあるが少し輝きを失ったメディアを、個人的な執着から強引に手に入れるという富豪たちの伝統に則っていた。ニューヨーク・デイリー・ニュースを手に入れようと奔走したロバート・マクスウェルや、ウォール・ストリート・ジャーナルを法外な額で買収したルパート・マードックと同じく、マスクもツイッターを手に入れなければ気が済まなかったのだ。

その過程で、彼は「文化戦争」を戦う右派の世論を巧みに動員した。このメディアプラットフォームは、マスクが率いる企業の株価を押し上げてきた「個人崇拝」をさらに強める上で、極めて有効な装置だった。

だからマスクにとってプラットフォーム全体を支配下に置く決断に、迷う余地は全くなかった。それを自らの政治的関心に沿った場へ作り変えることができれば、見返りは莫大なものになる可能性があった。

マスクはツイッターの従業員の半数以上を解雇し、運営構造を根本から変えた。「信頼と安全」を担当するチームを解体し、投稿内容の監視体制を大幅に縮小する一方で、子供たちを人身売買や性的虐待から守る取り組みを前任の経営陣よりも強化すると主張した(「子供たちを守る」というテーマ設定は、陰謀論的なオンライン右派が執拗に繰り返してきたものだ)。

「反エスタブリッシュメントのポピュリスト億万長者」という自己演出の下、マスクは認証済みアカウントを示す青いチェックマークを廃止した。本来は著名人などが成り済まし被害に遭うのを防ぐための仕組みだが、マスクはエリートの地位を象徴する印だと批判した。

newsweekjp20251112033639.jpg

新著『金ぴかの怒り』 BLOOMSBURY CONTINUUM(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英、対米医薬品協定を正式決定 対米関税ゼロに

ワールド

ロシア・イラン外相が電話会談、ホルムズ海峡の安全巡

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、5万3000円回復 自律

ワールド

アルゼンチン、イラン臨時代理大使を国外追放 攻撃関
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受給年齢」
  • 3
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トランプ関税が米国民に与える「破産」の苦しみ
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 6
    日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    先進国が出生数の減少を嘆く必要はない? 「経済的…
  • 9
    「一般市民に敵意なし」...イラン大統領が米国民宛て…
  • 10
    200年前の沈没記録が裏付けられた...捕鯨船を海の藻…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中