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「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年を経て分かった「意外な発生源」とは?

Mystery of World's First Known Pandemic Solved

2025年8月29日(金)14時39分
スー・キム

「私たちの研究は、ペストのパンデミックが単一の進化的系統や出来事から生じたのではなく、地域ごとに根付いた多様な自然宿主から独立して発生していたことを示している」と、研究チームは記している。

研究チームはさらに、今回の研究が「ペストの長い歴史の背後にある生態学的な複雑さ」を浮き彫りにし、「ペストを単なる歴史的現象としてではなく、長い時間の中で形成され、環境に根付き、人の移動によって影響を受ける現在進行形の人獣共通感染症として捉え直すものだ」と述べている。

ペストの発生はめったにないが、ペスト菌(エルシニア・ペスティス)は現在も世界中に存在している。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、アメリカ西部の農村部やアフリカ、アジアの一部地域で「まれだが持続的な」感染症として存在しているという。

今年7月には、アリゾナ州ココニノ郡の住民が肺ペストで死亡したと報告された。アメリカでの肺ペストによる死者は2007年以来初となる。肺ペストは、エルシニア・ペスティス感染の中でも最も致死率が高い、肺に深刻な感染を引き起こす型だ。

先週には、カリフォルニア州サウスレイクタホに住む住民がペストに感染していることが確認された。キャンプ中に感染したノミに噛まれたとみられている。

ペストは抗生物質で治療可能だが、「重症化や死亡を防ぐには、迅速な投与が不可欠だ」とCDCは警告している。

References
Adapa, S. R., Hendrix, K., Upadhyay, A., Dutta, S., Vianello, A., O'Corry-Crowe, G., Monroy, J., Ferrer, T., Remily-Wood, E., Ferreira, G. C., Decker, M., Tykot, R. H., Tripathy, S., & Jiang, R. H. Y. (2025). Genetic Evidence of Yersinia pestis from the First Pandemic. Genes, 16(8), 926. https://doi.org/10.3390/genes16080926

Dutta, S., Upadhyay, A., Adapa, S. R., O'Corry-Crowe, G., Tripathy, S., & Jiang, R. H. Y. (2025). Ancient Origins and Global Diversity of Plague: Genomic Evidence for Deep Eurasian Reservoirs and Recurrent Emergence. Pathogens, 14(8), 797. https://doi.org/10.3390/pathogens14080797

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